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□偽物と本物の価値
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例えば
金剛石と硝子玉
甘いケーキと展示用の模型
木刀と真剣
どちらが価値が高いだろう。
『偽物と本物の価値』
夜風が宿屋の屋根に座るルークを撫でる。
自分の検査のあと、ジェイドが宿屋に泊まることを薦めてみな言うとおりにした。
すでにみな眠っているが、ルークはどうしても眠れなかった。
『残された時間がもうない』
その検査からわかった事実がやっと『生きる』ということに執着し始めた彼を追い詰めていく。
「…少し前まではそんなこと思わなかったのにな。」
そう呟いて自分の手をみる。
今はちゃんとそこに存在している。
それがわかっていても、レムの塔で手が透けたことがまるで自分の未来を示しているようで。
思わず自分を抱きしめる。