御伽噺の本棚

□認めたくない、なにか
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戦闘を学ぶ、そのときに少年が最初に求められたのは「『はやく』かつ正確に」だった。

少年ながらに賢い彼は、それを求められる理由をすぐに理解した。
周りの屈強な男たちに対して、自分のカラダはまだ完成されていないということを少年は知っていた。ゆえに、力の勝負では明らかに分が悪いのも解っていた。
『速さ』は極めれば戦闘で「触れられずに勝つ」ことができる要素、そして相手の攻撃に対してより『早く』対応して「正確」に急所を突ければ更に勝率は上がり、ダメージも少なくて済む。それは子供と大人の身体的容量が違う以上、重要なことだった。
もちろんこれ以外の方法では譜術士としての道もあったし少年には譜術士としての才能があった。しかし譜術士としてだけの戦い方は、少年には合わなかった。

「『はやく』かつ正確に」、それを求められた少年は、それからひたすらにカラダを鍛えつづけた。特に、脚と目を重点的に鍛えた。誰よりも速く動き、誰よりも早く攻撃を見切れるように。
そして同時にあらゆる知識を蓄えていった。世界情勢、組織的戦術や統制の方法、経済学、はては譜術士としての技術。

何度もカラダが筋肉痛や打撲で軋み悲鳴をあげ、ときには動けなくなることもあった。譜術を暴発させ怪我をすることもあった。
それでも少年は鍛えつづけ、そして所属する騎士団のより過酷な任務へと喜んで就いた。予言と予言を崇める人々への憎悪を糧に、あまりの過酷さに自身の存在が悲鳴をあげているのを楽しむかのように。

少年は騎士団史上過去最短だろう期間で第五師団師団長兼参謀総長というポストに就き、自身の拾い主にに誘われるまま彼は六神将の席に座った。その戦い方と得意な譜術の特性から何時の間にか冠していた二つ名は「烈風」。
団員たち曰わく高圧的でひねくれているが有能な少年、シンクは、鍛錬場で百人組み手58番目の団員と対峙していた。
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