始まりの場所
□優しさ
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骨でできてるかのような街灯に照らされてる一本の道。
空の色を反映している赤黒く薄暗い場所。
不気味としか言いようのないこの場所を、相変わらず2人で黙々と歩き続けている。
石を踏む音が響く。
会話なんてない。私も話しかけようとはしない。返事が返ってこないか、返ってきてもどこかバカにした雰囲気を孕んでいるというのがわかっているから、というのもある。
でも話しかけない一番の理由は、今、とても神経を集中をさせているから。
私の後ろ──さっきからこの背中がザワつく感じ、なんだろう。嫌だ。
振り返っても何もいない。気のせいなのかもしれない。でも逃げ出したい衝動が体中を駆け回る。
今歩いている道の左側はさっきから続いている森、右側は森から背丈の高い草むらに変わった。
相変わらず左右どちらから"何か"出てきてもおかしくない状態だけど……やっぱり後ろが、なんだか嫌な感じがしてしょうがない。
でも気のせいかもしれない。何もいないんだから──そう思い込もうとしていた時、目の前を歩いていた彼が急に道をそれ、草むらに入っていった。
いきなりの行動に驚くも、私は彼について行くしかないので後を追う。
「あの、どうしたんですか?」
そう聞いてみても案の定というか、返事はない。私は軽くため息をつき、彼の入っていった草むらへと足を踏み入れた。
ガサガサと葉のこすれる音が耳元で響く。
こうやって頑丈で背丈の高い草をかき分けていると、さっき変な男から逃げてた時のことを思い出してしまう。後ろから聞こえてくる奇声に体が震え、死の恐怖に怯えながら走った時のことを……。
……思い出したくなかった。
奥歯を噛み締め、彼とはぐれないように必死に後を追う。
少し進んだ所で立ち止まった彼の目の前には、大きな岩が立ちふさがっていた。大きいといっても草丈よりは低いけれど。
彼は、ちょうどいいですね と独り言のように言った後、私の方へ振り向いた。
「貴女はここに居て下さい」
「え……な、なんで?」
「貴女も何となく感じてたみたいですが、つけられてます。処理してくるので待ってて下さい」
「え…? って、ま、待って!一人にしないで、」
「貴女がいると邪魔です」
そう言葉を私に投げつけると、彼は来た道を足早に戻って行く。彼の姿は草の向こうへと消えてしまった。
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