始まりの場所
□始まり
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現実と非現実
それらは常に隣り合わせで、他方へ続く扉は望んでもいないのに開かれた
始まりの場所
「それじゃ月曜日に詳しい内容を決めるんで、放課後また集まってください」
太陽が沈み辺りを闇が支配している時間帯、委員会を終えた私は筆記用具をカバンへ詰め込み、足早に校門へと向かった。
校内の電気はほとんど消され、部活があった生徒も帰り始めている。一日中太陽の光を遮っていた雲は今は月と星を隠していて、辺りには人工的な光がぼんやりあるだけ。
夏休みが終わってから一週間がたった。昨日まで残暑が厳しかったというのに今日はずいぶんと涼しい。日も完全に落ちた今では、半袖じゃ少し肌寒いくらいだ。
「山本くん!ごめん、お待たせ!」
「おう、お疲れさん。オレも今来たとこだから気にすんな」
校門には部活を終えて私を待っててくれた山本くんの姿。いつものようにニカッと笑っている彼に走り寄り、二人並んで歩き出す。
こんな所を山本くんのファンに見られたらリンチされそうだ。ちなみに私達は付き合ってるわけではない。(人気者の彼と私なんかじゃ身分が違うから当たり前なんだけど)
こうして一緒にいるのは、向かっている目的地が同じだから。
「なんか急に涼しくなっちゃったね。昨日はあんなに暑かったのに」
「な。一気に秋が来ちまったみてーだな」
「今日……本当にやるのかな、肝試し」
今向かっている目的地、それは肝試しをするために待ち合わせをしている場所で、私たちは今夜、夏の定番行事をやることになっている。
きっかけは昨日ツナが「そういえば今年の夏休みは肝試ししなかったね」なんて言い出したことから始まり、まだ暑いし少し遅い肝試しをしよう、と自然に決まった。
ただ、暑かったのは昨日までの話。
今日は肝試し日和なんかではない。
「んー、ツナから連絡来てねーし……やるんじゃねぇか?」
「そうだよね……」
確かに、中止の連絡が来てないということはやるということだろう。授業が終わってすぐに帰るツナ達とは、それじゃまた夜にね、と言って別れた。
「ま、涼しい中の肝試しもいつもと違って面白いかもな」
「山本くん前向きだなー」
そんな他愛ない話をしながら私たちは集合場所へと向かう。
学校帰りの私たちとは違い、みんなは私服で来るんだろう。こんなに涼しくなるなら何か羽織るものを持ってくれば良かった……。
少しそう思ったけど家に寄るつもりはない。待ち合わせの時間が近づいてたし、少し肌寒い程度だから大丈夫だろうとあんまり気にしなった。
この時は。
そう、この後これが"後悔"に変わるなんて、この時は思ってもいなかった
20080313.