暗く、人通りも車通りもない夜道に足音が響く。
荒い呼吸の音と速い自らのヒール音を耳に入れながら、こんなはずでは、と思った。
ただ、自らの仕事をしただけで。
確かにそこに好奇心があったことは否定できないが、まさか自分の身に起こるとは思っていなかった。
後ろから足音は聞こえない。
しかし追われているのは確かだった。
息が続かず、足元がもつれそうになる。
そんな中、コツ、といきなりすぐ近くで鳴った静かな足音。
瞬間、腕を捕まれると同時に後ろへ引っ張られ、それによりバランスを崩して倒れ込む。
捕まった――! そう思うも束の間、うつ伏せに倒れた自身に、何者かが馬乗りになった。
頭を押さえつけられ、身動きが取れない体に戦慄が走る。
そして鋭く尖った歯が首筋の皮を勢いよく貫き、激しい痛みと共に口から出た甲高い悲鳴が、夜の闇をつんざいた。
2013.10.30.