il vampiro

□プロローグ
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暗く、人通りも車通りもない夜道に足音が響く。


荒い呼吸の音と速い自らのヒール音を耳に入れながら、こんなはずでは、と思った。


ただ、自らの仕事をしただけで。


確かにそこに好奇心があったことは否定できないが、まさか自分の身に起こるとは思っていなかった。


後ろから足音は聞こえない。


しかし追われているのは確かだった。


息が続かず、足元がもつれそうになる。


そんな中、コツ、といきなりすぐ近くで鳴った静かな足音。


瞬間、腕を捕まれると同時に後ろへ引っ張られ、それによりバランスを崩して倒れ込む。


捕まった――! そう思うも束の間、うつ伏せに倒れた自身に、何者かが馬乗りになった。


頭を押さえつけられ、身動きが取れない体に戦慄が走る。


そして鋭く尖った歯が首筋の皮を勢いよく貫き、激しい痛みと共に口から出た甲高い悲鳴が、夜の闇をつんざいた。











2013.10.30.

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