09/13の日記
00:55
十五夜(SSS)
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ムラユ
少甘
「電気消しちゃって、お月見?」
風呂から上がり、濡れた髪を拭きながら自室へ戻るとベランダに出ている渋谷が空を見上げていた。
その姿をしばらく眺めながらこっそり抱きついてやろうかと思ったが、手摺りにひじをつけ、片方のサンダルを繰り返し下へ落としては履き直す様子を見てそんな雰囲気にもなれずに話しかけた。
「いや、お月見と言うかアレってさぁ……」
隣へ並んで立つと、渋谷は今唯一の光源である月へ指さし困ったような表情を浮かべている。
「アレって?」
「月にうさぎの模様が見えるのって眞魔国でも同じだっけ?」
娘に教えるつもりなのだろう。かなり真剣に悩んでいるようだ。
しかし困ったことに、僕自身あちらの月を見ることはあってもクレーター事情までは把握していない。
訊いてくるくらいだから渋谷もそうだろう。
「さぁ……。でもこっちの“うさぎに見える”っていうのも、中々難しいけどね」
「なんで?」
「真正面よりも頭傾けないと餅つきうさぎには見えづらいから。くび痛いけど」
渋谷の方へ傾け月を見ていると、頭にそっと渋谷の肩があてがわれた。
「おれの肩に置いていいよ。その方が痛くないだろ?」
そう言った渋谷の言葉があてられている場所から体に響く。
「……ありがとう」
嬉しくて甘えるように深々と顔を寄せた。くっついている部分から体温が感じられる。
あったかいなぁ……。
「次向こうに行った時に確認するしかないかー」
「うん、そうだね。僕も付き合うよ」
二人で見た月は雲にかかることもなく、僕たちを明るく照らしてくれていた。
→end
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