08/31の日記

00:10
最終日(SSS)
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ムラユ
ほのぼの





8月31日――


「夏休みの宿題終わった?」

「んー?あと解けてないのが少しだけ」

寝転がっていたベットから起き上がり、村田の隣に立った。
家に来て早々、村田はおれの机に置いてあった問題集やノートをめくっている。
一通り見終わると、全てを持ちテーブルの上へ置いていた。

「じゃんけんしよう。五回勝負で君が勝てば解けてない問題教えるよ」

困ったな。
これの為に会う約束したんじゃないのに。

「いや、大丈夫だよ。あとで自分でやるし、わからなかったら勝利にも訊くから」

明るかった表情が一転、一気に暗い表情になっている。

「ゆーちゃんってば、もう僕を頼ってくれないんだね。夏休みの始めから中盤まではいっぱい訊いてくれてたのに……」

だからなんだけど……。


村田は座り込むと床に何度も円を描いている。

「ごめん。悪かったって。そんなに拗ねなくてもいいだろ?……わかったよ、五回勝負だっけ?」

「うん!そう五回」

「いきなり明るくなっちゃって……、じゃあ始めるぞ。じゃんけんっ――」



「――渋谷って、そんなに弱かったっけ?」

「いや、そんな事ないと思うけど……」

運が良いのか、悪いのか四回続けて負けている。なんとか、おれの願っている方向へ進んでいるようだ。
本当はこんな事で時間を潰したくないんだけど。

だって今日は――



「負けちゃった。渋谷の勝ち」

「あっ……」

勝ってしまった。

「さぁ、どの問題を教えようか?」

「……」

楽しそうな村田をよそに、おれは立ち上がり彼の背中合わせに座り寄りかかった。


「やっぱり、止めとく。それより今日はずっとこのままがいい」

一日中一緒にいられる事が出来るのはしばらくの間は無さそうだから。二人だけでゆっくりいたいんだ。


「今日の渋谷へーん」

そう言った後、小さく笑った村田の声が聞こえた。



→end

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