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□fulfill one's duty
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「渋谷、ドキドキしてる?」
「してるよ…すごく」
おれの頬に手を当て、村田の顔が至近距離まで来ている。
次に何をするのか分かっていたので静かに目を閉じて待っていた。
「そう…。じゃあ僕も渋谷と同じ位したい。だから、渋谷からして欲しいな」
おれの唇を指でなぞり、目を開けると微笑んでいる顔があった。
「え゛ぇっ!!?」
「予想通りの反応ありがとう」
予想外の展開こんにちはー、…じゃなくて。
「お…おれからするの?」
「うん。僕からばっかりするのも何だかねー…と言う訳で、渋谷からしてくれるまで僕は何もしない」
突然そんな事を言われても、すぐにおれからは出来無かった。
村田が近付けば目を閉じる、といった具合で既に癖付いていたからだ。
「じゃあ、また明日」
言うだけ言って帰ってしまった。
どうしたらいいんだろ…?
いや、村田の事だから少し時間が経てば諦めるに違いない。
そう思っていた。
しかし、翌日・翌々日が過ぎて会話はするものの村田の言った通り何もなく、日だけが過ぎてく。
そして四日目に入り、おれは眞王廟の村田の部屋に来ていた。
「渋谷」
不意に名前を呼ばれ相手を見ると、こちらへ近付いている。
これまで何も出来なかったおれに諦めがついたんだろう。
そう思い、いつもの様に目を瞑った。
「……君の横にある本、取ってくれる?」
言われた通り横を見ると本が置かれている。
勘違いしていた事に気付き本を渡した時だった、ちょうど血盟城へ帰らなければならない知らせが入った。
「また来るよね?」
「…うん…」
“何もしない”と言われていたとはいえ、自分がした行動に触れる事さえしてもらえなかったのがとても辛く感じた。
やるべき事を終わらせ再び眞王廟に戻る頃には空が暗くなっていた。
部屋の前に着きノックをしてみるも反応が無い。
「村田?勝手に入るよー…」
呼びかけて扉を開け、村田の側まで近寄った。
戻ってくるまでに時間が経っていたせいか、ベッドの上で仰向けになり読みかけの本をおなかに置いて寝ている。
おれは無意識に本の上にあった手に触れていた。