□【また来年も一緒に】
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全国学生音楽コンクール・アンサンブル部門。星奏学院オーケストラ部がそれを制し幕を閉じた……翌日。

至誠館や神南と言った、菩提樹寮を宿舎にしていた生徒達は、それぞれの家へと帰る準備をしていた。

その中には当然、想いを通わせ合う事ができた新くんも居る訳で。

私は今、新くんの荷造りを手伝いに、彼の部屋へと来ていた。

元々荷物が少なかったのか、そんなに時間が掛かる事はなくて。

(お昼になる前には終わりそうだなぁ)

…なんて思っているうちに。

ビッ、と。ダンボールを閉じるガムテープを切る音が耳に入り、新くんの方を見てみると…

それで荷造りは終了したようだった。

「ふぅ、後は自分で持って帰るものだし…。うん、これで終わりかな!かなでちゃん、手伝ってくれてありがとう!」

助かっちゃったよ〜!と笑う新くんに…

「ううん、私は大した事してないよ。それにしても新くん、手際良いんだね!」

ちょっと意外だったなぁ、と笑って告げると。

「へへっ!かなでちゃん、惚れ直した?…まあ、何度か引っ越しを経験したからねぇ。この位はね…」

ふ、と目を細めて笑う新くんから答えが返って来た。

「…そっか」

頷き返して、すっかり片付いてしまった部屋を見渡すと、ツキン…と、小さな痛みが胸の中に走った。

(…新くんが明日帰ってしまう事、ちゃんと解っていた筈なのに、ダメだなぁ)

至誠館高校の皆は明日の朝に菩提樹寮を出る、って事は昨日帰って来てから新くんに聞いた。

だから…

(それまで、たくさん笑っていたいんだ)

これから暫く、新くんと会えなくなってしまう。

それなら…寂しい顔や悲しい顔よりも、笑っている顔を次に会う時まで覚えておいて欲しい。

…そう思うから。

(新くんに心配掛けちゃだめだ…!)

「……。…あっ!かなでちゃん!」
「えっ…なあに?新くん」
「なんかさ〜、喉渇かない?オレ、ちょっとジュース買って来るね。かなでちゃんの分も買ってくるから待ってて!」
「う、うん…?」

新くんは私が頷くと同時に、勢いよく立ち上がり、お財布と携帯を持って素早く部屋から飛び出して行ってしまった…。






「新くん、遅いな…」

新くんがジュースを買いに出てから数十分。

ジュースを買って帰るにしては、あまりにも遅すぎる時間。

だんだん心配になって来て…

(うん、探しに行こう…!)

新くんの部屋の鍵(机の上に置いてあった)を手に、戸締まりをして部屋を出ようとした時だった。

メールの着信を告げる軽快なメロディが鳴り響き、私はポケットから携帯を取り出し、メールを開いた。

それは…


From:水嶋 新
Title:お願い!
─────────────
かなでちゃん、『あの時の場所』まで今すぐ来て!!

ヒントは…とーっても、広〜い場所だよ!

待ってるからね!

─────────────


新くんからのメールだった。

(とりあえず、何も無かったなら良かった…けど…?)



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