ss

□恋しくて
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いつものことなんだ。


何度言っても聞きやしない。


いちいち腹を立てていたらコッチの身がもたない。


しかし…




しかし!!





「元希さん!アンタ時計読めないんですか!?」


日曜日の午後、ここらに住む者には待ち合わせの定番となっている駅前の時計台に彼らはいた。


「あ?何言ってんだお前、んな訳ねぇだろ」

「じゃあ今何時か言ってみて下さいよ!」

時計台の時計をビシッと指差して隆也は怒鳴る。
時計の針は12と2を指している。つまりは午後2時だ。
そして待ち合わせの時間は、午後1時だった。

「なんだよ、たかが1時間じゃねぇか。忍耐力ねぇなぁオマエ」

「それが…それが遅刻した奴の言うことかよ!」

あまりの開き直りの言葉に隆也は開いた口が塞がらない。
5分10分ならまだしも1時間の遅刻になんの連絡も入れず、しかもほぼ毎回の事なのだ。
それが分かっているなら自分も彼に合わせて遅れて行けば良い、とも思うがキッチリとした性格の隆也には到底出来る事ではなかった。
ちなみに隆也は約束の15分前には到着して待っているので、1時間15分待ちぼうけだ。


「あーハイハイ、私が悪ぅございました!」

「それ、本気で思ってないでしょう…」


ハァっとため息をついて隆也は肩を落とした。


(元希さんは俺と出掛けるの、楽しくないのかな…)

お互いに学校と部活があるから、こうやって二人で出掛けるのは本当に久しぶりなのだ。
隆也はそれはそれは楽しみにしていて、前日から服やら行く場所やらを張り切って決めて来ているのである。
この意識の違いに腹が立つと言うよりは悲しくなってくる。彼にとっては自分と過ごす時間なんて、そんなに特別なものではないのかもしれない。



ただの日常…



隆也はハァと再び大きくため息をついた。
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