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□卒業
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今日は中学の卒業式だった。


いつもなら色々な部活動で賑わっているグラウンドも、今日は卒業生やその親たちで埋め尽くされていた。

授業以外では立ち入らなくなった場所。


色々あったけどやっぱり慣れ親しんだ場所から去っていくってのは淋しいものだ。

榛名はそんなグラウンドを眺めながら中学の3年間を思った。




入学した当初は小学校よりも広いそれにワクワクと心が踊ったものだ。
放課後の部活の時間が待ち遠しくて、SHRが終わったら一目散にグラウンドに駆けて行った。


「秋丸、おっせーよ!早く行こうぜ!」

「ちょ、ちょっと榛名!まだ用意出来てな…」

「そんなん適当に詰めときゃイイだろ!先行くぞー」


野球が大好きで


投げる事が大好きで


毎日が楽しくて楽しくて







はぁ……

何を感傷的になってるんだか、全くらしくない。


溜め息をつきグラウンドから視線を外す。もうここに来ることもないだろう。

楽しい思い出も沢山あるけれど、いや…あるからこそやるせない気持ちでいっぱいになる。





ふと視線を上げると見知った影が近付いて来た。


「榛名!こんな所にいたのか、写真撮ろうって女の子達が捜してたよ」

少し息を乱した秋丸が走り寄って来た。

わざわざ捜しに来るなんて律儀なヤツだな…。

校舎の方を見るとカメラを持った卒業生たちがワイワイと集まっているようだった。
皆友達や先生たちと楽しそうに話している。
校舎の横にあるテニスコートでは記念に、とコートをバックに写真を撮っているテニス部員たちもいた。



「おー、お前こそ部活の方は良いのかよ」


榛名は途中で抜けたが秋丸は最後まで部活を続けてたいたのだ。
同じ高校に進学が決まっている秋丸はもうチームメイトと過ごすのは最後になる。


「あぁ…、送別会はもう別でやったから今日は何もないよ」

「ふーん」


チームメイトや組んでたバッテリーと同じ高校を選ぶ事だって出来たはずだ。


そりゃ誘ったのは俺だけどさ…。


また彼と野球がしたかった。

またバッテリーが組みたかった。



「榛名!高校では一緒に野球やろうな!俺、またお前と組めるの楽しみにしてるよ!」

「!!」


ニコニコと笑いながらそう言った秋丸。その嘘偽りのない笑顔を見ていると、さっきまでの曇った心に温かい光が射してくるようだった。


長い付き合いのせいか、なんか見透かされてる気がする…。


ちょっと悔しいけど
そんな彼だからこそ!


「お前に…、俺の球が捕れたらな!」



また一緒に



end
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