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□無自覚の君に
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なんとなく気付いてた




甘く見つめるその瞳

抱き締めると自然に首に回される腕

口付けに答える唇




そんな誘うような仕草




初めてのはずがない

こちらが異を決して行なってしたそれらの行動に、何でもないと言うようにサラリと甘く返してくる彼


本人は気付いてないのかもしれないが、アリアリと見える前の男の、影



悔しくない訳がない…!



「高瀬?」



やわらかく微笑む君に笑い返すことは出来なくて


そんな綺麗な笑顔にもイライラして、腹が立って、悔しくて…



腕を引いて少し乱暴に唇を合わせる

「わっ……んん…ふぅ……ん」


噛みつくような荒々しいキス

そんなキスにも答えてくれる君




悔しい悔しい悔しい




自分以外にもこんな彼を知ってるヤツがいるなんて!

彼にこんな甘い時を教えたヤツがいるなんて!!




想いが通じ合って嬉しくて幸せなはずなのに



悲しくて涙が溢れ出す



「高瀬?…おま、何泣いて…」


突然の涙に驚いた声が聞こえる

そりゃ向こうからしたらこの場面での涙なんて予想外だろう


オロオロと焦ってこちらを見つめる彼
なんで、どうした、と必死で慰めてくれる


腹でも痛いのか?なんてお決まりのセリフが彼らしい




あぁ、余裕のない彼は新鮮だな



いつも自身満々で俺様で我が道を行く彼
あわあわと可哀想なくらいに狼狽える姿が可愛らしい





ねえ、その顔は俺にだけ…?





そんな彼をもっと見ていたいから


まだ暫くは泣き止んでやらない


end
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