頂き物

□Dear Writer...
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彼女の書く文章は、まるで彼女そのものだった。



【Dear Writer...】



「――珍しいな、お前が恋愛物を書くのは」


新作に目を通して欲しいという彼女の頼みを、俺は二つ返事で了承した。
高校時代からの長い付き合いというのもあるが、彼女の書く文章は俺の気に入りだったからだ。


彼女の書く文章は、まるで彼女そのものだった。


硝子の様に美しく。
人を寄せ付けない硬質さと共に。
どこか孤独ともの哀しさが漂った。

――それは彼女の過去に起因する。

悲しい事だと言う者も居るかもしれないが、それもまた彼女の一部だと考えれば、俺にはむしろ好ましかった。


しかし手渡された原稿は、そんな俺の印象を裏切るものだった。


それは、とある綴り手の物語。
美しい言葉を書く事に、こだわった男性と。
美しい言葉より、響く言葉を書きたいと願った女性の。


――恋の、話だった。




『あなたの言葉は、私には飾り過ぎに思えます。もっとシンプルで良いのに、と』

『感性の違いかな。けれどより美しい言葉を書きたいというのは、作家なら誰もが抱く欲だと思うよ?』

『――否定はしません。ですが美しい事と、華美である事は違います』

『――僕の言葉は、華美だと?』

『あなたの言葉は、とても華やかであると同時にひどく、軽い。その軽やかさもまたあなたの売りではありますが、私はどうも苦手なのです。――言葉には魂が宿る。だから私は、もっと響く言葉が書きたい』





  
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