小説
□少年のある一日
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「今年もまたこの季節がきたんだな」
「えぇ、始まりの季節です。綾芽にとっても特別でしょう」
「え……?」
すると、なにも持っていなかったはずの桔梗の手に、いつの間にか赤い大きな布と、金色に光る何かがあった。
「さぁ、これをお召し下さい。遠慮なさらずに」
「お、おい、桔梗!?」
桔梗は、俺の戸惑いの声などは一切気にもとめず、テキパキと俺に様々なものをまとわせていった。
数分後、俺の体には赤いマントが着せられ、手には金の杖、頭には冠がのせられていた。
「……桔梗、どういうことだ」
校門近く、桜並木の真ん中で俺は王様みたいな格好で立たされている。
次々と登校してくる学生たちは、この不思議な生徒を見やり、笑い、それぞれ勝手な感想を口にしながら通り過ぎていく。
「まさか忘れられたのですか?お祝いですよ」
「お祝い?」
いや、これはどう見ても罰ゲーム……。
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