小説
□王子様とデート
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「……桜沢が、許可をくれなかった」
不機嫌な表情のまま、つぶやく。
私の質問の答えにはなっていないんだけど……。
「許可って、なんの?」
「ナンジャタウン」
「は?」
なんじゃたうん?
「別に日帰りのつもりだったし、東京なんてどうってことないのに、桜沢は絶対ダメだって言って聞かないんだ」
どうやら今日、私と東京のナンジャタウンに行きたかったのだけど、許可がおりず、こうしてむくれているらしい。
「まぁ、数日前に言ったから急なことだったし……仕方ないけど」
窓の外をながめながら指先で髪の毛をいじる綾芽くんは、少し寂しげに見えた。
思い通りにいかずすねる横顔は"17歳"という彼の実年齢を思い出させて、思わず私は頭をなでなでしてあげたくなったけど、嫌がられそうだからやめておいた。
「それで、今日はどこ行くことにしたの?」
振り出しにもどる。
「……どこだっけ?」
「はぁ?!」
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