小説
□王子様とデート
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日曜日の朝。
クローゼットの中からお気に入りのアンサンブルを選んで、いつもより念入りにメイクをする。髪の毛もちょっとオシャレにとめてみた。
時刻は午前の9時。
予定時刻に教員寮を出ると、寮の前に黒塗りの立派な車が一台とめられていた。
私はまっすぐ車にむかい、後部座席のドアをあける。
そこには綾芽くんが腕ぐみをして座っていた。
「おはよう」
「……」
綾芽くんの隣、あいてるスペースに乗り込んで座る。
あいさつしても返してくれない綾芽くんは、なんだか怒ってるようだ。
「どうしたの?」
「出してくれ」
私の言葉には返事をせず、運転手さんに指示を出す綾芽くん。
エンジンがかかり、車は走りだした。
細い道をぬけ、大通りに出る。
「ねぇ、どこ行くの?」
私は『日曜日、朝9時に車で迎えにいく』としか聞いていないのだ。
私の仕事を手伝ってくれたお礼としてのデート。
全て綾芽くんにまかせてあるので、これからどこへ向かうのか、内心ドキドキしている。
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