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□臆病な2番目
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「もぉひっどいのー!!」




ヒステリックな声が部屋に響く。否、正確には声の主は部屋のドアを開けるなり開口一番に叫んだので、廊下どころか家中に響いたはずだ。下手をすると隣にも。私は『またか…』と心の中で呟き、ため息をついた。机に向かい課題をこなしていた私はドアに背を向けていたため姉の様子は見ていないが、彼女が騒音公害を発生させた理由のだいたいの検討はついていた。今までの経験上、次に発せられるだろう言葉の予測もつく。その言葉は…




「あんな男、別れてやる!!」




…だ。私は思わず両手で耳を押さえる。…見事に一字一句間違えず言い当てた私だが、特に喜びもなく、嬉しくもない。むしろ、ただただ呆れるばかりだ。つまりは、私がその叫びを容易に想像できるようになる程、彼女は同じことを繰り返しているということで。




「今回は何日間?」
「…意地悪。」
「何回目?」
「…陽名の方が覚えてるんじゃない?」
「18回目?」
「…でも、今回は2週間だもん。」




私の感覚は姉の感覚とズレている。…というよりは、姉の感覚が普通の人とズレているのだと思う。私は付き合い始めたカップルが2週間で別れるのが長く付き合った方だとは思わない。むしろ、友達の話を聞いている限りでは極めて短い方だろう。それを彼女は『こんなに長く付き合った』と話す。まぁ、少なくとも18回は交際の経験がある位男性にもてる彼女だから仕方がないと言えば仕方がないのか。




「14日間ね…で?」
「」
 

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