雑食短編
□個人授業/黒球
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午後の講義中、俺と共通な趣味が多い岡から、俺の好きな小説作家の新作が出てるという内容のメールが受信された。
ありがとう、と返信をし、どんな話の本かなーと考えていたら、いてもたってもいられなくなり最後の講義を終わってすぐ近くの本屋に駆け込んだ。
***
そこで俺は今ありえない光景を目にしている。
あの・・・セックス魔人の桑原和男が、英語だろうか?参考書コーナーで真剣に立ち読みしているじゃないか。
話掛けようと思ったが、まずは自分の本が先だとお目当ての本を探す。
ーーお目当ての本の他に最近お菓子作りがマイブームな俺は料理本コーナーで美味しそうなお菓子の載った本も1冊手に取り、まだ居るだろうか、と参考書コーナーに行く。
『(あ・・・まだいた。)和男?なにしてんの?』
嗚呼、やっぱり似合わない。
和男に参考書って・・・。
『ぷふっ「おい、何笑っとんねん。」
あからさまに嫌な顔をしながらさっきまで読んでいた本を元の場所に戻す。
『いや、あまりにも参考書が似合わないなって。』
「うるさいわ。それにこれは俺の生徒に頼まれたのを選んでただけや。」
んん??・・・生徒?
『生徒って、和男先生やってんの?』
これは初耳だ。
「先生ってか、俺英語塾で講師してんねん。」
『マジ!?凄いじゃん和男!俺にも英語教えてよ!』
「はぁ!?なんでそないな事せなあかんのや。」
『和男の授業受けてみたいじゃん。晩飯作ってやるからさ。な?いいだろ??』
「残念やなぁー。今から仕事や。」
全然残念がってない和男。
折角和男と2人で飯食えると思ったんだが今日は失敗に終わりそうだ。
『じゃあ和男が暇な時でいいからさ!!』
「そやなぁー、咲良もなんか俺に授業してくれるんやったらええで。」
『たとえば?』
「咲良は料理すきなんやろ?だったら・・・。」
俺の持ってる本をじっと見る和男。
「それ、その本についとるケーキ作るんやったらええよ。」
お菓子の本の表紙についてるのはオーソドックスなショートケーキ。
まぁ何度か作った事あるし教えられる筈だ。
『ああいいよ!じゃぁいつにする?材料買っとくからさ。』
「ああ、明日丁度休みやった。咲良はなんも予定ないんか?」
『明日は・・・うん、大学休みだし。』
「じゃー明日の昼ごろ咲良んちに行くわ。」
すぐ仕事なのか、じゃーな、と手を振り書店を後にする和男。
俺も本を買い、スーパーで明日の材料を買ってから帰宅した。