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□平凡な平和/進撃の巨人
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無口な青年は、彼の前では甘え足りない子供のようだった。





「おいヒロ!そこ兵長室だぞ!」

『…だから?』

「おいコニーッ!ヒロはいいんだって。」

「はぁ?どういうことだよエレン。」

『俺…行ってもいい?』

「あ、ああ。引きとめて悪かった。」


田舎出身で同年代の子供なんて周りに居なかったのもあって、訓練兵団の時はあまり人と関わるのに積極的ではなかった。

…その結果が今表れている。

コニーが俺に話しかけてきたことなんて、仕事以外で始めてじゃないだろうか。

そんなことを頭の片隅で考えながら兵長室のドアを数回ノックしてゆっくりとドアを開けた。

まず先にいつも兵長が座っている椅子を見ると誰も座っていない。

ざっと部屋を見回しても彼は居らず、少し待てば来るかとまずは部屋に入った。

どこに座るでもなく窓際に立って外を見る。

***

兵長と親密になったのは今考えても現実味がない。

巨人を倒してた俺を見て、挨拶もなく唐突に俺の戦い方が好きだと彼は言った。

調査兵団に入ったのも兵長に誘われてから。

誘われなかったら今頃俺は駐屯兵団に所属していただろう。



「おい、何してる。」

『呼んだのは兵長じゃないですか。』

「あ?そうだったか…突っ立ってねぇで座れ。邪魔くせぇ。」


ゲシゲシと俺の足首を軽く蹴る兵長に急かされながら椅子に座り、隣に座ろうとした兵長の服の袖を少し引っ張って自分の膝の上に座らせた。

みんなには内緒だが、俺達はそういう仲である。


「くっせぇな。」

『ごめん、でもあなたから離れたくない。』

「風呂入ったのか。」

『いや…。』

「汚ねぇ寄るな。」

『じゃあ抵抗してください。』

「…めんどくせぇ。」

『…。』


兵長のわき腹から腕を回し腹のところで手を結ぶ。

至近距離で香る兵長の匂いは、俺の獣臭い体臭などではなくいい匂いがする。

兵長だってまだ風呂は入ってないはずだ。

俺はこんなに汗臭くて髪もべたついているのに、兵長はいつもさらっさらで清潔感がある。

この差は一体なんだろうか…。


「今日は何体やった。」

『えと…10体くらいでしょうか。数えてないんで…すいません。』

「そうか。」


兵長はまっすぐ前を向き俺の顔を見ることなくそう言うと、また無言の時間が出来る。

結構おしゃべりな彼だが、今日は話したくないらしくじっと座ったまま。

察しの通り俺は口下手だからあまり話しかけられないが、この無駄な時間が嫌いなわけではない。

胸から太ももに密着している兵長の体温を感じながら、ボーっと彼のうなじを見た。


ギュルルルル…


「…。」

『すいません。朝から何も食えなかったんで。』

「俺を膝に乗せて何が満たされんだ。飯食ってこい。」


右腕を手前に出し何をするのかと思ったら、兵長は思い切り俺の腹に肘打ちを喰らわせた。

手加減の無い彼の攻撃に腹を擦っていると、兵長はすんっと音を立てずに立ち上がりすたすたと歩き出す。

そのまま部屋を出ていくのかと後ろ姿をじっと見つめていると、彼はドアの前で立ち止まり俺の方に振り返った。


『ッ!』


じっと厭らしい目で見ていたのがバレたのだろうかと息をのむ。


「お前怪我してんのか。」

『えっ?あ…腕ちょっと切っただけなんで大丈夫です。

あ!服汚しましたか!?』

「そういうことを言ってんじゃねぇ。

手当くらいちゃんとしろ。じゃねぇと足手まといになるだろうが。」


兵長は優しい。

一部の人しか彼の優しさを理解していないようだけど、俺には分かる。


『はい!…。』

「何笑ってんだ。」

『いや、嬉しくて。』

「気持ち悪ぃな、さっさと飯食って風呂入って寝ろ。」

『はい!』




end

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