雑食短編

□ぶるーはーつはキミのものー前ー/青エク
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***


寮に帰りウコバクに弁当美味しかったよと弁当箱を返し自室に戻る

雪男はまだ帰ってくる筈もないし、燐もまだ帰ってこないだろう

誰も居ないと分かればすることはひとつ

俺だって健全な男だ

自慰をしないわけではない

でもいつも薄い壁を一枚隔てた隣の部屋に奥村兄弟がいる状況で気持ちよく自慰が出来るはずも無く…

しかも好きな人が居るなら尚更だ

こんな機会は1ヶ月に1回あるかないかなので急いで制服を脱ぎ部屋着に着替えてベッドに飛び込む

ベッドわきにはティッシュがスタンバイして早く僕を使って!と言わんばかりに主張してくる

準備OK!完璧だ!そう思いながらパンツごとハーフパンツをずり下ろし自分の性器に触れる

思い浮かべるのは勿論燐のこと

燐のあられもない姿を妄想しながらゆっくり触れるとあまり時間も掛からない間に熱をおびて硬くなった

滑りも良くなり息も荒くなるほど手を動かす


『あっ…はぁッ…燐ッ燐ッ』


誰も居ないと思い、思いっきり声を出して夢中で自慰に浸っているとゴトンッとドアの方で音がした

吃驚して起き上がりドアの方を見ると

俺以上に吃驚した顔をしている燐が床に食いかけのゴリゴリ君を落として俺を凝視している

まずい…バレた


「おい…りんってまさか…」

『…』

「お、おい…否定しろって」

『…ごめん』

「マジかよ…信じらんねぇ…」


言い訳できなくて俯いていると燐はそれから何も言わず部屋を出て行った


「・・・男なのに俺でオナるとか、ないだろ」


出て行く際に出たその一言を聞いてふと我に返る

リンなんて名前の女の子は少なからず居ただろうになぜさっきそれを言えなかったのか

一気に冷めた俺は萎えた性器をティッシュで拭き何事も無かったようにいつのまにか脱げていたパンツを穿く


『はぁ〜…』


ベッドに座りなおし両手で顔を覆い盛大な溜息を吐いた

今までこの気持ちがバレないように必死で隠してきたのに

ちょっと気を緩めた隙に全て台無しにしてしまった

ほんとバカな事をした

燐でエロい妄想をしまくった罰なのだろうか

それにだけにしては酷すぎやしませんか神様


『…手、洗んないとな』


イカ臭い手を洗おうとドアの方に行くと燐がさっき落としたであろう食べかけのゴリゴリ君が結構溶けて床に水溜りをつくっていた

ドアで見えなかったがもう1個袋から出されているゴリゴリ君が同じように落ちている

俺のために買ってきてくれたんだろうなと思うと申し訳ないことをしてしまったと罪悪感に襲われる


『ごめんな…燐…』


気持ち悪いと思うのは当然だけど、やっぱり燐が大好きだという気持ちに嘘は付けない

いっその事告白をしようかとも思ったが、振られ際に立ち直れない程のことを言われるのは耐えられないのでやっぱりやめた

さっきの態度みてりゃ振られるのも目に見えているし…

そんなことよりもまずはゴリゴリ君を片付けないと俺の部屋がアリの巣になってしまう

勿体無いけどゴリゴリくんを流し台に置いて水をかける

本来俺の口の中で溶ける筈だったゴリゴリ君は不憫にもそのまま下水行きだ


「ちょっと柚、パンツ一丁でなにしてるの」

『あ、雪男おかえり』

「ただいま」


今帰ってきたのだろうか少々疲れ顔の雪男が俺の隣に来る

雪男は流し台のゴリゴリ君をじっとみて眉間に皺をよせる


「食べ物は粗末にしちゃだめだろ」

『俺の所為じゃないって…嗚呼俺の所為か…』

「…?」

『あ、いや!床に落としちゃってさ』

「ふーん?ところで兄さんは?」

『どっかいった』

「一緒に帰って来たんでしょ?」

『いや…』

「…なにかあった?」

『たいした事無いから大丈夫だって』

「ならどうして泣きそうな顔してるの」

『…』


正直大声出して泣きたいさ

でもそんなの女々しいだろ?

泣いたら本当に失恋したみたいな惨めな気持ちになる

それだけは嫌だった


「兄さんのことだ。また思ってもないことを口にしただけだよ

そんなに気にすることじゃない」

『…そうだよな』


あんな冷めた顔で思ってもないことを口に出来るだろうか

あの言葉が嘘ならどれだけ救われるか…

クソッ…思い出したらまた心臓がチクチク痛んできた


「柚…」

『ん?…ッ』


返事をしようと雪男の方を向くと

俺を包み込むよう抱き締め頭をよしよし、と撫でてきた


「泣きたいと思ったら泣かなきゃ

溜め込むと後が辛いだろう?」

『……ふッ…うぅッ…』


今まで必死に堪えていた感情がぶわッと溢れ出る

雪男の制服が濡れてしまうのもお構いなしに思いっきり泣いた
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