キミの唄
□09.異常
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小十郎との再会を果たし、私は昔と少し変わった城に足を踏み入れた。
いまの私は、現代にいた時とほとんど同じ歳。
思っていたよりもこちらと向こうとでは流れる時間の早さが違うらしい。
だから、竺丸も大きくなっていた。
そして、5歳だった梵もきっともう、立派な一国の主になっているのだろう。
前を歩く逞しい小十郎の背中を見て、政宗になった梵の姿を思い浮かべる。
あんなに頼りなく泣き虫だった梵天丸が戦に出て民を守っている。
どことなく、嬉しかった。
「小十郎、梵って強い?」
不意に思ったことを聞く。
一国の主なのだから強いのだろうが、小十郎の口から教えて欲しかった。
しかし、聞こえなかったのか小十郎は黙ったままだ。
「ねえ、小十郎?」
「・・・・申し訳ありません、なんでございましたか?」
横に並ぶと、はっとしたように小十郎はこちらを見る。
わざわざ、もう一度聞くほどのことでもなかったのでふるふると首を振り、適当に笑って見せた。
「あ、そうだ、今から梵に会える?」
期待を込めて問いかけると、小十郎の顔が曇る。
「政宗様はただいまお出かけになっております」
そっか・・・。と私はそっけなく返したが、小十郎は酷く悲しそうだった。
梵天丸になにかあったのだろうか?
嫌な予感が胸に浮かぶ。
しかし、小十郎に案内されてしばらく用意した部屋で待つように言われた。
「勝手に部屋を出ませぬように。」
と、小十郎は私に何度も言って部屋から出て行った。
「(昔から、ダメって言われるとやりたくなるんだよね)」
私は、小十郎が出て行って少し時間を置くとこっそり部屋を抜け出した。