キミの唄
□04.片目
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ずぶ濡れの体をゆっくりと落ち着かせ、床に出来た水溜りを見つめる。
「梵天丸様の右目、気になるか?」
小屋に着くと、小十郎がそう尋ねてきた。
私は少し迷い小さく頷いた。
数十日前のことだ。
梵天丸様は体調を崩してしまってな、生と死の境を彷徨うことになった。
「ぅ・・・っ・・ん・・・」
「梵天丸様!?気を確かにお持ちください!!」
それはそれは苦しんだ。
「千・・っ・・・千・・・!」
何度も、姫様の名前を呼んでいた。
それから数日、梵天丸様は病に打ち勝った。
だが、
「梵天丸、よかった・・・・」
義姫様は優しくその髪を撫でる。
ふと、右目に巻かれた包帯に気を取られた。
「この包帯はなに?」
さらりと真っ白な包帯が床に落ちていく。
その後は、悪夢でも見ているようだったさ。
梵天丸様の右目は・・・
「小十郎、勝手な話をするな」