*Novel*
□藍の雫◆一度だけ…
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中央に白いテーブルと椅子が置かれていたけれど、七斗は座らずに彩那を見下ろした。
「あの……何か?」
彩那が首を傾げて尋ねると、七斗は人形のように整った顔立ちに柔らかい微笑を乗せた。
「坂本さんて。付き合ってる人とかいるの?」
「え?」
突然、仕事とは関係のないことを言われ、彩那は戸惑ってしまう。
「いないなら、俺と付き合ってよ」
「……ごめんなさい。私…好きな人がいるんです」
そう答えた瞬間、彼は傷ついたような切ない表情を浮かべた。
「……そうなんだ。それなら仕方ないね」
彩那が頭を下げて部屋を出て行こうとしたとき、七斗に手首を掴まれ引き戻された。
「待って」
彩那はバランスを崩し、彼の胸に倒れた。
「あ…」
そのまま優しく抱きしめられる。