*Novel*
□藍の雫◆一度だけ…
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さらさらの黒髪と、真っ白なYシャツ。
吊り目がちの瞳から放たれるワイルドな眼差し。
キーボードを打つ指は長くて…。
(伊吹君、やっぱりカッコいい…)
同期入社の彼をこっそり見つめ、彩那(あやな)は小さく溜息をつく。
あの指に一度でいいから触れられたい…
そう願っていたけれど。彼は彩那には興味がないのか、食事にすら誘ってくれたことがなかった。
「坂本さん。ちょっといい?」
休憩中。同じ部署の先輩・七斗(ななと)に呼ばれ、彩那は立ち上がる。
廊下に出た彼は一番奥の部屋に入っていった。
六畳ほどの狭いミーティングルームに彩那も足を踏み入れると、扉がゆっくりと閉まった。