歌詞小説

□敵は何処だ?〜最期の悲劇〜
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あの事件から一ヶ月が経った頃の話だ。




ドンッ、と鈍い音がしたかと思いきや後ろに突き飛ばされたような感覚がして、そのまま俺は後ろに倒れた。
状況を整理しようと前を見てみるとそこには一人の人が座っていた。
明らかにこの付近の者ではない。服装からしてそうだからだ。
「いたたっ・・・」と呟きながら立ち上がった奴は次に俺のほうを見下す。
その表情はあまりにも不安そうで逆にこっちが情けなくなった。

「だ、大丈夫〜・・・?ちょっと考え事してて・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

と言われ手を差し出されたが知らない奴の手を掴むなんて事、だれがするか。

「別に・・・大丈夫だが?」

「あ、え・・・?あ、じゃあせめて名前だけでも・・・」

「そういうお前は何者だ?何処から来た?」

「・・・オイラ?オイラはダイヤモンド。ダイヤって言ってね。日本からここへ来たんだ。」

「・・・・・・日本、ねぇ・・・」

聞いたことがある。
・・・あれ、日本といえば・・・

「・・・で、君は?」

「・・・俺、は・・・パール、だ。」

「パールかぁ・・・よろしく、パール!!」

「・・・」

「あ、そうだ、ホテルなんだけど・・・オイラの部屋、行く?」

「・・・はぁ・・・?ホテルって何だ?」

「・・・・・・ええ・・・?と、とりあえず行けばわかるよ、それに此処で話すのもめんどいし・・・」

「・・・・・・・・・あ、そ・・・」




という訳で、俺はホテル?に行くことになった。
とても高い建物の中らしい。
こんなに高い建物が今なお残っているのが第一印象だ。
同じドアが一列に何個も並んで迷いやすいな・・・と思いきや、そのドアの中の一つに鍵を挿し、あけた。
良く迷わないな、と関心さえしてしまう。
中に入ると、見たことも無い景色だった。
始めてみるものばっかりで、少し戸惑った。

「・・・えぇと、これは何だ?」

「それは・・・えっと・・・椅子だよ?あ、そこに座ってて、ちょっと待ってね・・・」

そう言うと、黄色をした鞄をまさぐり始めた。
これにどうやって座るんだ?こうか?

「!!? ちょっと、それはそう使うんじゃないって!!まぁいいや・・・喉渇いてるでしょ?ジュースあげるよ!」

「・・・喉渇いたけど・・・水が良い・・・」

「・・・へぇ・・・変わってるねー。そっちの蛇口をひねれば水はいくらでも出てくるよ。」

「・・・ありがとう。」

俺は椅子・・・だっけ、から下りて指差されたほうの物に向かった。
ひねる・・・とか言ってたな、こうか?

ジャーーー・・・

「うわっ、すげっ、水がこんなに・・・しかも綺麗・・・」

「それならいくらでも飲んでいいからさー・・・」


とても美味しかった。
水を飲み終えてダイヤの方へ向かうと・・・

「・・・ちょっといい?君ってさぁ、いちいち驚いてたよね・・・ホテル見た時も、部屋に入るときも、蛇口を見た時も・・・君ってもしかして、捨て・・・子?」

「・・・・・・・・・・・・」

「い、いやだった?ご、御免ね!?」

「・・・嫌じゃないけど・・・本当のこと言われたから・・・」

「・・・そうか・・・じゃあしばらくゆっくりしててもいいよ?それか・・・日本へ行く?行ってオイラと一緒に暮らす?」

「・・・・・・・・・」

オイラ"達"を付けなかったのは何か理由があるのだろう。
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