マクロス腐小説
□矢アル3!
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《アルト君、あのね、お願いがあるんだ。無理かもしれないけど、アルト君に一度会いたいの。いつでもいいから空いている時間教えてくれないかな?》
《・・・・・・・・今から、大丈夫か?それでいいなら少しだけ、会えるから》
《本当!?わかった!大急ぎでいくね!あの丘で待ってて、アルト君!》
《ああ》
手に持っていた携帯電話をズボンのポケットにいれると、身支度を整えて、自分の長い髪に手を伸ばす。
「未練がましいよな・・・俺は・・・」
そう言って、重々しくドアを開ける。
自分はパイロット志望の高校生を演じているだけ
矢三郎にいわれた言葉があれから何度も頭をよぎる。
違う、違う、いくら頭の中で否定していても、心が、本能が、アルトを支配していた。
「ちくしょう・・・っ・・・!」
美しい顔がギリ、と歪む。
さっさと忘れてしまおう。
ガリア4で二人から最高の誕生日をもらったから、今も、ランカが俺の事を想って≠ュれているから。期待に今度こそ応えてあげないと。
でも・・・
アルトの眉間にはしわがより、地面に視線を落としながら歩いていた。また心の奥底で矢三郎を思い浮かべながら。
「俺は・・・・・・」
『何がしたいんだよ』
そういいかけたのを自分でさえぎる。
言葉一つ位で何を弱がっているのだろう。
あんな事兄さんがいった出任せに過ぎない。
何を気にして・・・
いくらアルトがそう思ってもその思いはぐるぐるぐるぐると回るだけでまた元のスタート地点にたどり着いてしまう。
「有人さん」
アルトはランカに会いにいっている所をある青年に呼び止められた。たかが一年ちょっとで声を忘れるはずがない、あの兄さんの、声。
「・・・兄さん・・・!?」
何て運命的なタイミングなんだろう、とアルトは思った。それは同時に最悪のタイミングでもある、と考えながら全身に軽く力をこめる。
「・・・・・この前の誕生日プレゼントはお気に召しませんでしたか?」
「当たり前だ・・・・・」
アルトの口調は最初こそ荒々しいが、次第に矢三郎に囚われたかのようにおとなしくなった。
「貴方は本当にいつまでたっても幼稚なまま・・・」
矢三郎はアルトの長い髪を手に取り、優しくすいた。
「っ・・」
途端に顔が熱くなり、矢三郎から目をそらす。
あの感覚をアルトの体は覚えていた。
「俺はランカに会いに行くから兄さんと話している暇はない・・・!」
顔を背けたままのアルトの台詞は迫力がなく、自分の髪を触っている矢三郎の手を払えず、上から優しく押さえるだけだった。
「もう、お芝居はやめにしませんか・・・?」
そういうと矢三郎は細い目でアルトをにらみつけるようににしてみると歩き出した。
「梨園に・・・行きましょう。先生は今日体調が優れないので寝ておられますから」
「・・・」
『ランカが待ってるし、俺は梨園を捨てた!』
それがどうしても喉の奥でつまってしまって吐き出せなかった。
自分の上辺だけの言葉が本能に逆らえなかった。
「兄さん・・・」