アルシェリ

□飛び付いたら
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朝早く起きてこれでもかという位悩んで選んだ服を着て出かける日はアルトに会う時。

あたしらしくないけど、とっても新鮮な事だらけで緊張してる。


―――
―…


アルトに会いに行くまでの道程。

何しようか

何させようか

どこに行って

お昼は何食べよう

帰りはアルトを手を繋いで、別れる間際にはキスをしたい。



…自分のしたい事だけじゃなくてたまにはアルトのしたい事も聞いてみよう。


自然と胸が高鳴る事に安心しながら歩く。


―――
―…



「…おい、こんなに頻繁に買い物して楽しいか?」


すでにアルトは両手いっぱいの買い物袋を持っていた。時々腕に掛けなおしてみたりと大層重そうにしながらシェリルの後を歩いていた。


「ええ、アルトは何か欲しいもの、ないの?」

「…別にないよ」

「そう…」


アルトはずるい


いっつもギリギリの所まで何にもしてくれない。

あたしばっか頑張って…


―――
―…



その後もシェリルの買い物は続いてシェリルの手にも買い物袋が増える。


「今日は俺がシェリルの買い物に付いていってるだけだったな」

苦笑しながらアルトが言うと、シェリルが素早くアルトのいる方向に振り替える。

「ふ〜ん、でもね、あたしはまだ満足できてないから」


まだ今日したかった事が
全然できてない。


アルトに会うまでに考えていた事すべてが消えていった。

残ったのは別れる時。


何か最近頑張りすぎたし、もういい。


居れるだけでいいかな。



ギリギリまであたしがダメになったらぎゅってアルトから抱き締めてキスしてもらえるかな。



「俺も」


「?」


「丸一日買い物に来たわけじゃないんだけどな」


「…何よ」


少し不安が顔に出てしまっていると思う。

だから少しだけ顔をそらした。


「こんな荷物が無かったら…今、シェリルを抱き締めてやれるのに」


言った後に恥ずかしそうに顔を赤らめて笑ってみせた。


「ばかっ」


シェリルは手にぶらさげた荷物をその場に落とすとアルトに思い切り、暖かさを感じながら抱きついた。


「そーいう時は荷物放り出してでもキスしなさいよねッ!」


「き、キス何て言ってない!…ん〜」


荷物を自分の足元に下ろすと抱きついてきたシェリルの背中に腕を回す。


「アルトのくせに、生意気なんだから…」


アルトはずるい


そんなに焦らされたら我慢なんか出来ない


あたしもずるい

「キス、人前だと…あれだから…一瞬だけだからな?」

あたしが飛び付いたらアルトが手を回してキスをする事位――分かってた。


「ええ!」







END
 

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