精霊達のレクイエム

□果てしないクロニクル
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ガヤガヤと五月蝿く感じる事が一般の街の騒音。
けれどモニカにはそれすらも安らぎに感じる。

しかし肩に乗っているグレファーは違うようだ。
眉間にシワを寄せて、眉を潜めている。

(ああ、もう。せっかくの顔が台なしじゃない。)

見える人はここにはいないけれど、どうしても彼女の整った顔が歪んでいると気にせずにはいられない。

内心苦笑しつつ、質屋で物を見繕っていたモニカは重たい腰を漸く上げた。

「お邪魔しました〜。」

結局何も買う事なく店を出たが、一応挨拶は忘れない。

むしろ何も買わなかったのに、長時間居座り続けて居たことに罪悪感を持つ。

そんなモニカをグレファーは不思議そうに見上げる。

「どうして買わなかったの?」

「欲しい物がなかっただけよ。」

にべもなく言い返すが。嘘だ。

それなりに良い物はあったし、買ってもいいと、思うような品はあった。

しかしグレファーは余りそこには居座りたくはなかったようで、気分が悪そうに見えたからだ。
実際あの店の雰囲気がダメだったのだろう。

品もそれなりに良かったし、揃えも悪くなく、店主もいい人だった。
しかし欠点が一つ。
そこに在った物が本物だった、という事だ。


解りやすく言うと、そこに在った品がグレファーには合わなかったのだ。

魔力の篭った品は、力のある神官などが作り出せる。
しかし彼等の数は少なく、それなりの物を作るとなれば時間が取られる。
多忙である彼等の中で、それらを作るのはほんの一握りの人だけ。

そうなれば魔法具が不足する。


そこで何処の誰が思いついたかは知らないが、妖精を遣う事に思い当たった人がいたのだ。

つまりは道具を遣うために妖精を遣う。
それは妖精の殺生をしたと言うことを表す。

正直モニカが知ったのもつい最近。
それはグレファーに指摘されて気づいた。

グレファーは精霊だ。
同族とも言える妖精を遣われた品々に故意的には近付きたくはないのだろう。


改めて無理をさせてしまったか感が拭えなくて、我ながら至らないばかりだと唇を噛む。
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