精霊達のレクイエム
□始まりの言葉
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「隠された土地?」
「ええ、そうよ。この国に昔魔物達から人々を守った八神将と呼ばれる人達の存在は知っているわね?」
「八神将って本によく出て来るわよね。確か色々な神器を持って立ち向かった勇敢な人達でしょ?」
「そうよ。その神器を隠したとされる場所が隠された土地よ。ベルシアのような世に知らされていない土地はベルシアも足して8つ。土地のことは各国の王族のごくわずかの人しか知らないわ。」
今までそんな場所が存在するなんて予想もしなかった。
しかも、その場所が母の故郷だなんて。
「けれど、私が母様の故郷に行かなければならない理由は?」
そう、なぜこんなにも急に出発が決まったのか……
「――隣国のフケート王子やその国の国王陛下が今夜お忍びで屋敷にいらっしゃることになったの。」
母親の発した初めの名前を聞いた瞬間、私はビシリ、と固まった。
「母様、それは本当?」
信じたくなくて、母に確認をとる。
嘘だと言って欲しい。
「この期に及んで私がモニカに嘘なんてつくと思う?」
それは思えない。
だが、信じたくなかった。
お隣りの国王陛下はたびたびこの屋敷で聞く不思議な噂を確かめに、その息子フケート王子はモニカに求婚を申込に。
どちらも私絡みなのだ。
母は、娘の意に沿わぬ事を阻止しようと頑張ってくれているのだ。
どちらに転んでも私にとっては最悪なことには変わりない。
「父様は何か言っていらしてましたか?」
そう、父デラシーネの了解をとっていないと私は屋敷を出れない。
「ええ。許可は私がもぎ取ってきたわよ。大丈夫、心配しないで。モニカを王子達が探しているようだったら言ってやるわ!娘は今別荘で療養中ですってね。」
母のこの強気な性格が私は好きだ。
温かくて安心するような、そんな感じ。
けれど、父は私を嫌っている。
きっとフローランス家の恥だと思っているに違いない。
このフローランス家は伯爵家だが、公爵家と同じくらい特別視されている。
モニカの兄、フィオーラはしっかりした人で勤勉だ。
だが、女は結婚と服の流行など、そんなことをしていればいいと言われるのだ。
女には勉強など必要ないと言われる。
だが、モニカは例外と言ってもいい。
彼女は勉強が好きなのだ。
知らないことを知りたいと思っている。