荒れ地のはな

□郷愁
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街に入り、その中央部あたりに差し掛かったころ、アイリスはイオに向き直り言った。

「不本意ながらもありがとう。あの時貴方がいなかったらはっきり言って困っていたわ。……だって、追われている内に自分がどこを走っているのかわからなくなっていたんだもの。」



「………俺のこと怒ってないの?」





アイリスの言葉を聞いた彼は不思議そうに呟く。




「まあ、はじめは何で見ていながら助けてくれなかったなんて最低なヤツだと思っていたわよ――」



そう言ってクスクス笑う。




「――けどね、普通はあんな所に人は居なかっただろうし、もし本当に貴方が居なかったら助ける、助けないなんて関係なく私は困っていたわ。それに、いくら男の人でも自分から危険に飛び込んで行く人はほとんどいないはずよ。だから、助けてくれてありがとう。」





「俺は貴女のこと助けていないよ。」




「なに言ってるの。助けてくれたじゃない。明かりに道案内、すっごく助かったんだから。それから、貴女じゃなくアイリスよ、イオ。」




「些細なことだよ……。変わっているねアイリスは。」




「よく言われるわ。けど、変わっていていいの。これが私なんだから。みんな変わっていなかったら同じ人間になっちゃうわ。だからイオも変わっているのよ。」





そう言って微笑む。




「じゃあここら辺で。私、しないといけないことがあるから。助かったわ。貴方の幸運を碧に誓って……、機会があればまた会いましょう。」




そう言ってアイリスはイオが何か口にする前に颯爽(さっそう)と去って行った。





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