精霊達のレクイエム
□戸惑う心と揺れる水面
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朝から外が騒がしい。
だいたい私は夜型だ。早起きは得意でもない。
いつもならお昼前に寝台から起き出すのだが、今日は五月蝿くて目が覚めてしまった。
日はまだ出ていないので今は5時過ぎくらいだろうか。
「………な、に……?」
我ながら人様の屋敷で図々しく昼過ぎまで寝るのもどうかと思うが……。
こっちまで駆けてくる足音がする。
私に宛がわれた客間まで走ってくる人など心当たりがない。
というより、みんな不自然なほど足音がしないのだ。まあ、単に私が気づかなかっただけかもしれないのだが。
なんだろう、と思いつつ急いで、椅子に掛けていたカーディガンを引っ掛けるように羽織る。
寝間着は寒くなってきている季節とはいえ、室内管理はしっかりとされており、薄着でもいけるくらいなので薄い生地で、身体のラインがわかってしまうものだ。
森で襲ってきたやつではないだろうが、一応武器になりそうな鉄製のパイプとおぼしい物を手に取った。
(なぜそんな物があるのかは謎だが)
膝丈より下まであるネグリジェの裾を大胆に捲り上げ、手早くドレッサーにあったピンで手早く留めた。
胸元にある紫色の光が私を優しくはげましてくれているようで、私はホッと息をついた。
そして素早くドアの隣に移動し、壁に張り付いくのと、バタンと扉が開いたのはほぼ同時だった。
「乙女の寝所に無断で入ってくんじゃないわよ!」
私はその物に向かって飛び込むように地を蹴り、頭にパイプを減り込ませようと勢いよく振り下ろした。
が、それは思わぬ形で受け止められることとなった。
自分の置かれている状況に目をぱちくりさせる。
背に回った手、パイプを捕まれた感覚、頬に当たる温かさ。
そして
「やあ、モニカ。元気してたか?」
―――懐かしい声。