荒れ地のはな
□郷愁
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「やっと街についたわぁ!!」
街の入口付近(ふきん)でアイリスは歓喜の声をあげた。
その傍(かたわ)らには森で出会った青年のがいる。
あの後、いけ好かない奴とアイリスは思いながらも互いの名を名乗った。
彼の名前はイオ。
アイリスの予想では彼はどこかの貴族だろう。
立ち振る舞いから全てが備わっている。
互いの名は名乗ったものの、お互い自分の事情などは一切言わなかったし、相手のそれを尋ねたりはしなかった。
「無事到着、か……。」
傍らにいたイオが呟いた。
「ええ、一応は無事に、ね。まあ、五体満足だから無事の内にはいるんだろうけど……。」
そのようなことを呟くアイリスをイオは苦笑しながら聞いている。
アイリスからすると襲われているのを見ながらも助けてくれなかったイオへの、一種の意趣返しのようなものだ。
なので彼も軽んじて聞いている。
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