小説

□雨
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降りしきる雨に、店の前でスクアーロは困り果てていた

今日の天気予報では晴れのはずだった
だが現実、目の前は嵐と言ってもおかしくないほどの豪雨

「まいったぜぇ…」

そういえば今朝出掛ける前ザンザスに

「傘を持って行け」

と言われたのを思い出した
あの時、ザンザスの言う事をきいていればと今更ながらに後悔をする

「あそこで超直感が出るとわなぁ…」

迎えを呼ぼうにも、今日に限ってケータイを忘れてしまい連絡が出来ない

雨に濡れる覚悟で走って帰ろうかとぼんやり考えていると

「おい」

突然頭上から声がして、ハッと見上げると






「…ザンザス」

「てめぇ、傘持ってけっつったうが」

黒い傘をさし、ポケットに手を入れたザンザスが目の前に立っていた

「すまねぇー…、迎えに来てくれたのか?」

「ちょうど退屈だったからな」

「そっか、ありがとな」

ふわりと微笑むスクアーロだが、本当は知っていた
今日一日ザンザスは忙しい事を

だから今日は一人で出掛けたのだ

「帰るぞ」

「おうっ、てかザンザス傘は?」

ザンザスの手には、今自分でさしている傘以外何ももっていない

「傘ならあるだろ」

そう言ってさしている傘をスクアーロに突き出す

「まさか一緒に入るのかぁ!?」

「ったりめぇだろ!」

おらっと言ってザンザスが隣に来るように促す

「でもなぁ…」

「早くしろドカス! 濡れるだろうが!」

これ以上怒らせたら鉄拳がとびかねないと思い、大人しく傘に入る

長身の二人には狭すぎる傘にスクアーロは苦笑いした

「車呼んでないのかぁ?」

「……」

ザンザスの返事が返ってくる前にスクアーロは視線を前に戻した

「まあ、良いけどよ」

傘を握り直し前を向いたまま笑いかける

ここからは見え無かったが、スクアーロにはザンザスが笑っている様な気がした

「今度は二人で出掛けようなぁ、ザンザス」

「ああ」

ザンザスも前を向いたまま答える

雨の降る中、二人は暗い道をどちらからともなく手を繋いで歩いた




約束だぜぇザンザス。

END

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