短編

□白石誕生日夢
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「白石君誕生日おめでとう!」
「蔵〜、うちからのプレゼントや。はい!」


4月14日晴れ、今日は四天宝寺中のアイドル的存在白石蔵ノ介の誕生日である。
朝から沢山のプレゼントを爽やかな笑顔で受け取る白石君を見る。結局私もあの中の1人に過ぎないんだよな何て思いながらバックに入っている小包を軽く握りしめた。

中2に上がった時にクラス替えでせっかく同じクラスになったのにもかかわらず、奥手で変なところが内気か私はあまり関わらないまま3年へと進級してしまった。
中学最後の白石君の誕生日。今日ぐらいは渡すだけ渡していい思い出にしたい。

そうこうしているうちに時は放課後。私は日直の仕事である日誌を書いている途中で寝てしまっていた。
もちろんプレゼントは渡せずにそのままである。


「忘れ物するとかあり得へんやろ…って、名字さん?」


教室に入ってきたのは何の偶然か忘れ物をして取りに来た白石だった。


「名字さん、こないな所で寝てたら風邪ひくで?
…名字さん」


白石は彼女にそっと歩み寄ると優しく頭を撫でた。
その顔は何だか切なげで誰が見ても美しいと答える、そんな表情だった。


「自分からのプレゼント、ちょっと期待しとったんやけどなあ…」

「んっ…」
「わっ!名字さんっ!?」


白石は顔を真っ赤にしてばっと手を離した。
きょとんとした顔で見つめていた彼女だったが、自分の憧れであった白石が至近距離にいることに驚き、こちらも赤面した。


「私いつのまに寝て…ってしっ、白石君?何で!?」
「いっいや、ちょっと忘れ物してもうて!(もしかして聞かれてたか!?)」

あわあわとしていたが、次第に落ち着くと何とも言えない沈黙が生まれた。


「あっあの!」


沈黙を破るように発したが見事に声が被ってしまい、またお互いに恥ずかしそうに赤面した。相手が赤面していることに気付く余裕なんて今の二人にはもちろん無い。


「、自分からでええで」
「う…うん」


彼女は近くにあったスクールカバンから小さな小包を取り出した。恥ずかしそうに持つ彼女に、白石はもしかしてと小さな期待を持った。


「今日誕生日だよね。迷惑かもしれないけどその…プレゼントです。お誕生日おめでとう」


顔を火照らせながら微笑む彼女に白石は胸が高なった。思ってもみなかったのだ。彼女からプレゼントが貰えるだなんて、誕生日を祝ってもらえるだなんて。
彼女の前じゃなかったなら思わず決め台詞を叫んでいたかもしれない。


「ありがとう。めっちゃ嬉しい!」
「こちらこそありがとう。たいしたものじゃないけど…」


白石君の反応は本当に嬉しかった。今まで憧れて、恋い焦がれた人間が目の前で嬉しそうに笑っているのだから。
これ以上嬉しいことなんて無い。

中学で一番の思い出が出来た。そう思った瞬間だった。


「名字さん、俺な。実は自分の事が好きやねん。一年の時に保健室で手当てしてくれたやん、その時に…」


惚れたんや。
白石の声はだんだんか細くなった。だがその声は彼女にしっかりと届いた。


「わっ私も、私もその時から好きでした!」


勢い余って大声で告白をしてしまった。それほど予想外だったのだ。
嬉しくて涙が自然と溢れてくる。
こんなにベタな展開はもしこれが少女漫画だったなら読者は飽きるだろう。でもそのベタな展開がたまらなく嬉しかった。
こんなに幸せな事はあるだろうか。


「泣くなって!
プレゼント貰ってから告白するなんて確信犯みたいやけど…
俺と付き合ってくれますか?」


大きく頭を二回縦にふった。

生きててよかった。
神様、本当にありがとうございます!


その後、白石と帰った初下校は何だか照れてしまって上手く話すことは出来なかった。
でも一つ言えることは
初めて繋いだ手はとても温かくて、夢のようだったと言うところだろうか。



(もしもし謙也か!?)(なんやねんお前、電話で叫ぶなやかましいわ!)(そんなんどうでもええねん!俺、俺な、名字さんと付き合える事になった!)(マジかあああ!よかったやないか!ああ…今までのお前の事思うと嬉しくて涙が…!)


4.14 白石蔵ノ介happybirthday!
お誕生日おめでとう!
何かだらだらした文になりましたが愛は込めたつもりです

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