銀桜

□澪標(銀高)
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「おぅ戻ったぞー。ヅラはどこ行った?明日の陣営の相談してぇーんだが…あれ?晋助は?」
「おかえりー…金時、おんしにはまだ知らせとらんだったかー…今日な、高杉の隊、半壊滅状態だったきのー」
「!半壊滅だって!はっ、嘘だろ?で晋助は?ケガは?残りの隊士はどうしてる?」
「…あぁ。高杉の隊士の中で人質にとられて、寝首をかかれたらしい。生き残った隊士は今ヅラが様子見に行ってるんじゃがのーまだ戻ってこんきに」
銀時は愕然とした。行動力と結束力とでは隊の中でも圧倒的な戦闘能力を誇る高杉の隊が半壊滅とは…。
天人のここの所の戦力は、今までと違い巨大なカラクリを投じての戦法に変化してきた。
昔ながらの自分達の戦法とは格段に攻撃力、殺傷力において上回っていた。それでも己の腕一本で立ち向かっていたが、押し寄せる天人らに押され劣勢の色が濃くなっていた時期だった。
「あ、銀時帰ったか。どうだそっちの戦況は?」
やつれて疲れ果てた顔に、精一杯の笑顔をのせる桂に銀時はやるせない感を沸き起こさせる。
陣頭指揮をとる桂は最初こそ戦場を駆け抜けていたが、戦況が危うくなりつつある今は本陣にて仲間達の帰りを待ち、戦法を指揮するいわば軍師的位置になっていた。
というのも先の大きな戦で、意識不明になるほどの傷を負った時、桂の存在感が嫌というほど隊士達全員知らされ、喪失するならば…との思いでしばらくケガが完璧に治癒するまで陣営にて指揮をとらされていた。
桂本人は戦場に出たいと焦っているのだが。
「…晋助は?」
「あぁ…」
力無く言い桂は困ったように笑った。
「…」
「様子を見に行ってはくれまいか?いつもの所にいると思うが…俺では…」
桂は静かに目を閉じ首を横に振る。



銀時は、走る。そこを目指して。
湖のほとりに大きな梅の木がある。
梅は百花に先駆けて咲く。
晋助の最も好んだ花だ。梅が咲いているそこにいると銀時は思った。
獣道を歩いて行くとそこには湖があり、目指す一本の大きな梅は散り際を急いでいるように見えた。高杉はうつろに梅の木にもたれかかりぼんやりしていた。
銀時は何も言わず高杉の横に座る。
「…銀時…」
二人の間に静かな時間が流れた。
木々の揺れる音。風に揺れる草の音。
春というにはまだ早く、風が吹くと肌寒く感じた。
「ケガは…ケガはなかったか?ぁあ、…白夜叉は天下無敵か」
「…お前は?」
「…」
高杉は、空を見上げた。
「…俺は、弱いか?俺は、みんなに護られないといけないくらい弱いのか?なぁ銀時?教えてくれ」
その顔にシニカルな笑みをのせる。
「晋助…十分てめぇは強ぇさ」
「はっ………強いか…じゃ、部下から腹に一発入れられてノビてる間に馬で敵陣から逃げ帰らされた大将は強いって言うのか?てめぇの代わりに犠牲になったヤツを護れもしないで逃げ、…逃げ帰ったのが、…強いと言うのかよ…」
腹から絞り出すような悲痛な高杉の声。
「…それでも、お前は強ェよ」
「大切な部下を見殺して、てめぇだけ傷一つなくのうのうと帰ぇって来る大将のどこが強ぇってんだっ!ぁあ!?白夜叉さんよぉっ」
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