銀桜

□胡蝶夢(銀高)
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「俺の歌にはノレねーか」
「…白夜叉が俺の護るものは今も昔も何一つ変わらん…と。晋介…何かわかるか?最後まで聞きたくなってしまったでござるよ。やつらの歌に聞き惚れた拙者の負けでござる」
パタン…そう言って万斎は出ていった。
「フン」
言いたい放題言ってくれるじゃあねーか。
白夜叉…銀時が護るもの…ヤツらしい。
俺の全ては、あの日、全部この手からすり抜けていってしまった。
あれ以来、大事なモンなんて持たねーって決めた。
護りたかったモンは、もう手が届かねー。俺が護りたかったモンは一つ。持ちたいと渇望しているのは、それは…。
幕府の犬どもから指名手配されてるが、今宵はあんな後じゃ出歩いていまいよ。
俺は、屋形船から降りてみた。万斎から聞いた。銀時もかなりの深手をおっていると。
銀時…今度は幕府の犬か。この前は桂、今度は犬。その時々にふらふらしやがって。
…でも、銀時と会いたい銀時、俺は無性に今お前に会いたい。
なぁ銀時、俺は何やってるんだろう。万斎に言われたからか?
…しゃらくせぇ。
あんなに強い絆を見せられたからか?
どいつもこいつも絆だなんだってうぜぇーんだよ。
道端に転がっている小石を蹴る。
どこをどう歩いたかもわからない。
道をあてもなく彷徨っていた。
今にも消えそうなしょぼい街灯がある橋の上だった。
今一番会いたくて、一番会いたくなかった人物がそこにいた。
「…銀時」
どうして、こんな時に?どうして、このタイミングで…。
「…よう」
いつものようにけだるそうで、相変わらず死んだ目ぇしやがって。
「おまえさぁ、あん時俺ぁ死ぬかと思ったぜー。なぁ晋介、何企んでやがる?」
「くっくっくっ…さぁね」
「真選組の伊東をたき付けたのは、お前か?」
「…だとしたら?」
銀時は一瞬目を細めた。普段、飄々としてるくせに、いざという時はかつての白夜叉の眼になる。「…いいねぇ。その眼。俺ぁお前のその眼が好きなんだよ」
俺が銀時に言うと、銀時はふっと小さく笑って眼を閉じる。
「…くれ、その眼。俺にくれ」
銀時は、俺を見て頭をくしゃっとかいて、ため息をついた。
「バカですか?あんた。お前が言うと、しゃれになんないんですけど」
少し、笑った。愛想つかしたように。でも、優しく笑ったように見えた。銀時は、俺の包帯の上から目を撫でた。
「…すまなかった。お前の、目を、護ってやれなかった」 
俺は言葉に詰まった。
心の中で会いたいと渇望していた人物を目にして。銀時はあろう事か自分の目を心配する…。何かを話さなければ…動揺を隠し、表面上は冷静を失わず…必死で心をみすかされないように…。
「てめぇのせいじゃねーよ。俺が、弱かっただけだ」
銀時はせつなそうな顔をする。
「なんでだ?なんでてめぇがそんな顔をする?」「…晋介、ちゃんと包帯はかえてんのか?」
銀時は小さな子供に言い聞かせるようにゆっくり話した。
そして銀時は俺に背を向けるようにして橋の欄干に手を置いた。そして首だけ俺の方を向いた。又静かに話し出す。
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