銀桜

□雪兎(銀桂)
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愛おしいあの人は、今何をしているのだろうか
愛おしいあの人は、
今何をその瞳に宿しているのだろうか



「銀ちゃん、何ぼーっとしてるアル。又何か、よこしまなコト考えてるカ? 」
「ぶぁーか、てめ。雪が降ってきたから見てただけだ」
「ぎゃあー、銀ちゃんのアホ!早く教えるネ!ちょうど身体ナマッてたアル!こりゃ雪合戦して身体動かすアル」
「バカかぁ〜まだ降り始めだから積もってねーよ」
「いやアル!ねぇ〜銀ちゃーん、外で遊ぼうよー。あ、雪だるま作るヨロシ」
「…あのなぁ、おめーこんだけじゃ作れるわけねーだろ。しかも風邪ひくだろ?お医者さんだってやってねーし。更に、だ。年末でクソ忙しいのに、そんな時間ありませーん!ガキはくそして寝てろ」
「…ふぅん。クソ忙しいと言ってるわりには、椅子に座って鼻クソほじってるのは忙しいとは言わないアル。しかーも、私のコト、ガキ扱いしてると後で、後悔するアル!私そのうち銀ちゃんがメンタマ飛び出るくらい、ボンキュッボンになる予定アルね!」
「…くっだらねー。てか、想像できねーよ。いや、むしろしたかねーよ」
俺はぼんやりと外を眺める。雪はまるでこの賑やかさを通り越して下品な喧騒までも包むかのように静かに降り続けた。
積もるだろうか?こんなに静かに降り続く日は、 あの日を思い出させる。…胸が締め付けられそうだ。神楽は、窓から手を思いきり差し出し、雪をその腕や手に冷たく積もる雪の感触に奇声をあげて喜んでいる。
俺は、それを見ながらおぼろげなあの日を思い出していた。
「銀さぁーん、神楽ちゃあーん、今日仕事入ってませんでしたよねー!?姉上が一緒にX'masパーティーしようって言うから、誘いに来ましたぁ」
新八が玄関を開けたまま勢いよく走ってきた。
「X'mas?パーティー?うわぁー忘れてたアル!銀ちゃーん、私今年いい子にしてたアル!プレゼント、プレゼント〜」
「………ぼくにも、何かあったらいいなぁ〜」
「ガキども。よく聞きなさい。銀サンはそんな西洋かぶれの行事は知りません。…ぁあーアレだアレ。サンタさんがきっとおまえらは除外したんだ」
「ジョガイ?それ食えるアルか?」
「除外ってぇのは、いいか、ハズレたってコトだ。なんでかわかるかー?サンタさんはな、オーロラの見える国に住んでて、コルバトントリという山のふもとにいるんだよ。知ってたかー?でな、X'mas前に小人を使ってその年にいい子にしてたか調査させんだぜ。てめーら、銀サンのいう事聞いていい子にしてたかー?ん?プレゼントがねーんだもんよー。サンタの国の小人に、いい子チェックから外されたからもらえねーんだよ、わかったか?」
「…銀サン…西洋かぶれの行事知らないって言いながら、よく知ってるじゃないですか…」
「…大人は汚いアル」
「か、神楽ちゃん、まあまあ。あ、今日は仕事入ってなかったですよね?銀サン、行きましょう」
「…あぁ、そうだな」
ホントは、一人になりたい気持ちが心の奥にあったが、神楽の嬉しそうな顔を見るとそう言えなかった。パーティーという言葉に顔をほころばせている神楽を悲しませたくはなかった。何もしてやれないという思いで重い腰をあげた。外に出る。

街中がX'masムードでいっぱいだった。普段からもネオンがひしめくこの街を、雪は静かにいつもと違う雰囲気に作り替えていた。俺達は、まだ少ししか積もってない雪の道を歩く。ふと、塀の上を見た。道の上よりも塀の上の方が積もっている。俺は、おもむろにその雪をかき集めた。 そして、小さな小さな雪兎を作った。
「貴様、何お子ちゃまみたいな事をやっておるのだ」
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