アフタースクール

□第ニ章
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爽やかな春風。
暖かい日差し。


ゆらゆらと揺れるクリーム色のカーテンをみつめると心の中のモヤモヤとかがすーっと薄くなっていく。

「春だなぁ…」

俺が目を細めてそういうと、後藤が
「ですなぁ…」と返した。

口をぽかっと開けて男2人が並んで座っている光景は、周りからすればあほらしいはず。
といっても、昼休みが始まると同時にみんなグランドやら体育館やら図書室やらに行ってしまって
教室には3人しかいないのだけど。
…なんだか何も考えたくない。

「…てめぇらいーかげんにしろよ。」

後藤と同じくキラキラと光る髪をして、つり上がった切れ目のこの男は、長谷川啓太(はせがわけいた)。

「…こえーなー」
「なー」

後藤の間の抜けた声に俺は相槌をうった。

「っ…なんなんだよ
渚のアホはわかっけど、清水までぼけっとしやがって!!アホは伝染すんのか!?あぁっ!?」

大きすぎる自分と俺達との温度差に苛立ったのか、長谷川は声を荒げた。

長谷川と後藤は幼い頃からの悪友らしい。…まぁ今は関係ないけど。

「…伝染て…さすがにひどくねぇ?」

(…何もいってやれねえ)

俺は後藤に同情の眼差しを向けた。

「つーかいーじゃーん昼休みなんだし。」

後藤は頭の後ろに手を組み、右足を左足にかけてポーズをとり、自分が座っているイスを揺らした。

「だからって」

突然扉の開く音がして

「大きな声を出してどうしたんだ?長谷川。」

嫌というほど聞いた低い声が長谷川の声を遮った。3人とも自然に声のしたほうを向く。

後藤はさりげに眉を寄せ、長谷川は大きな音をたてて舌打ちした。
…どんだけ生徒に嫌われてんだか。

ところで俺はというと、

ガッターン
とイスの倒れた大きな音がしたとき、やっと自分が立ち上がっていることに気づいた。

「どした?清水?」

立ち上がっている俺に、後藤が上目遣いで話し掛けてきた。

「え、いや、別になんにも?」

言葉をうまくつなげられず、単語ばかりが口からこぼれる。

「…」

長谷川は俺をちらりと盗みみると、目線を桜場に戻し

「なんか用スかぁ?桜場センセ?」

『ケンカ売ってますよ』と言わんばかりに声をかけた。

俺の鼓動がはやくなっていっているのが誰にもばれませんように、と心で祈る。

「いや?お前に用はないよ。長谷川。」

笑みをふくんだ言葉に長谷川は「あ?」と威嚇(いかく)をかえしてみせた。

「清水。…わかってるよな?」
(…!!)



 
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