番外編

□これは何かを変えそうだ。
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理解できんな。



…恋だの
…愛だのと


最近の高校生というのは

なぜそんなにくだらんことにきゃいきゃい騒ぎ立てるのか…


勉強しろ勉強。

お前達の仕事だろうが。


なんのために親に高い金出して貰ってるんだ。そもそも流星学園は名高い名門校だろう。…結局は10代のガキ集団ということか…






「はぁ…」


胸の辺りに貯まっていた苛立ちを吐き出すようにため息をついた。

ずっと夢だった教師になって…


初めての授業。
研修生時代に何度かやったことはあるがやはり重みが違うと思い、


その上相手が流星学園の生徒だということで

ある意味楽しみに
ある意味プレッシャーに感じていたのだが…



(全く…)





「拍子抜けだな…」






「あの」


「…ん?」

目を僅かに斜め下に向けると、所々くるくると跳ねた焦げ茶色の頭が視界に入った。


「邪魔なんですけど。」


数学準備室の前の扉に寄り掛かっているオレを
上目遣いに睨んでくる、深緑色の制服を着たこの少年は…


「あぁ…1年6組の清水か…悪い。
藤原先生に用事か?」

右手でワークらしきものを持つ清水の指示通りに体をずらす。


「はい、ワークを………………って え?」


清水は一度オレの問いに答えようとしたが、不思議そうに眉を寄せ声を漏らした。


「何だ」
「なんで俺の名前知ってるんですか…?
…初めて会いましたよね?」


くだらないことを言って清水はまさに…そう不審者でも見るような薄ら嫌悪と軽蔑を込めた瞳にオレをうつした。


「……教師が担当クラスの生徒を事前にチェックしておくのは可笑しいことか?」

腕組みをしたまま、
オレが溜息(ためいき)をつくように言うと、

彼は苦虫を噛んだような顔をした。

ふいっと髪を揺らして右に顔を背ける。


「おかしいに決まってます」


だそうだ。

…なんだこのピンポイントに人の怒りの根本を突くガキは。


「そうか。それはすまなかった。以後気を付けよう。」

自分の予想の倍ほど容易に相手の気分を意図的に害する言葉が出た。


ぎりっ、と清水は歯を食いしばって、彼は上目遣いに睨んでくれた。




「どーぞお気を付けてっ!!」




扉をスライドさせて中に入って

――ばんっ


…何と言うか
わかりやすい奴だな。



(清水…だったか。)



変な奴だ。







 
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