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□奪う5
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「あっ!やべー」
「?」
高杉は横をチラッと見ると、白衣やズボンのポッケを必死に弄っている銀八が目に入る。
「…火、職員室か家に忘れた」
「…」
自分に対し話かけたのか、独り言なのか分からないが、懇願したような目をこちら向けていた。
高杉は小さく舌打ちすると、ポッケからジッポを取り出した。
「ん」
銀八のほうにジッポを持った手を伸ばした。
一瞬、取るのに少し躊躇した銀八はそれを戸惑いつつ受け取る。
高杉はまた続きを吸い始めるが、なかなか隣から火を点ける音がしないので、不思議になり隣を見た。
ジッポとにらめっこをしてる銀八は、視線に気付くと、戸惑いの顔をこちらに向けた。
「…つけねーのかよ?」
そう言うと銀八は気まずそうな顔をした
「いや…高杉さ」
「あ?」
「この火点けてくんない?」
「…はぁ?自分で点けろよ、殴るぞ」
「…殴るぞって‥いや、実はさ‥」
「?」
「‥俺、ライター使えないんだよね‥」
「………」
「……」
「……は?」
高杉は思わず、苦笑いをした。
銀八が冗談を言ってるのだと思ったのだ。
「いや、何か、昔から何回やっても上手く点かねーし、ガキのころ一回点いたことがあったんだけど、びびって落としちゃて大騒ぎになったんだよね‥それがトラウマで‥って‥高杉!?」
見ると顔を伏せてる高杉の姿があった。
「?おい…大丈」
「…っ…ふっ‥……ククっ」
見るとそこには、思いっきり笑いを噛み殺している高杉がいた。
銀八は少し困ったような、表情で高杉を見つめた。
「…な〜にが、そんなに可笑しいんだコノヤロー」
高杉は口元に手を当てながら、ククッと笑い続けている。
「‥っ‥だって、ライター使えねぇって‥クッ‥ガキじゃあるめいしっ…」
「てめっ‥別にライターじゃなくても、マッチとゆう歴史ある火点け道具があるんですぅ〜」
銀八は少し拗ねた口調で、そっぽを向いた。
それを見た高杉はクスリと笑い、銀八に近寄っていった。