戦国BSR

□うちのパパは世界一
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お父様は日ノ本一だと私は思うの。

理由はちゃんとあるわ。
お父様はこの奥州で一番偉い人なんだもの。
とっても強くて、片手に三本ずつ刀を持ってるのよ。

それだけじゃないわ。

お父様は字がとっても綺麗なの。
手紙を書くのが好きみたいで、お母様宛にお手紙を書いたりするのよ。
一緒に住んでるのに可笑しいでしょ?

理由はまだあるの。

小十郎から逃げるのが上手だわ。
かくれんぼだって手抜きなんてしないの。
私相手でもよ。

他にもあるのよ。

お父様は南蛮語だって知ってるの。
南蛮ではお父様のことを「パパ」って呼ぶらしい。
そう呼んで欲しいと言われたけどお母様に止めなさいって言われてたわ。
その後で寂しそうにしてたから、二人だけの時は「パパ」って呼んであげるの。

あと、こんなところもあるわ。

容姿端麗で有名だから、今でも妾にして欲しいって人が多くいるわ。
その度にお母様のご機嫌を取って、あたふたしてるのを見るのは面白いの。
お母様のことが大好きすぎて、尻に敷かれてるのもお父様らしい。
これを、他の国のお友達に言うとみんな意外だって言うのよ。
不思議でしょ?

それに、こんな一面もあるのよ。

お父様はとにかく教育熱心で、色んなことを教えてくれたわ。
馬術や剣術、弓術に兵法。
囲碁に料理に、執務の抜け方も教えてもらったわ。
その度に小十郎から、不必要なものは教えるなと説教されてたわ。

でも、お父様には怖い時もあるの。

私がいけないことをした時は、とても怒ったわ。
刀や弓を締まってある物置に入った時なんて、そりゃ鬼の形相で怒ったわ。
それに、約束を守らなかったり、嘘を吐いたりした時も静かに怒るの。
お母様のことを嫌いって言っちゃった時は真っ暗な押入れに入れられたのを覚えてる。
怒ったらすごく怖い人なんだって分かったわ。

それでも私はお父様が大好きよ。

だって、誰よりも私を愛してくれてるから。
生まれた時はすっごく喜んで、目に入れても痛くないってほど可愛がってくれたらしいわ。
綺麗な着物をたくさん作って、かんざしや小物をわんさか取り寄せて、その度にお母様に叱られてたんだって。

今まで、お父様には面と向かって言えなかったけど、やっぱり好き。

だからね……パパ。
パパ……

「お嫁に行くけど泣かないでね」
「無理……」

目を手の平で覆ってるけど、頬を伝う涙は丸見えよ。
縁談の話があっても、政略結婚なんてさせるか!って言って、お母様を困らせてたわね。
お父様はお母様を愛していたから結婚したんだって言ってたわ。
だから同じように、私も自分で選んだわ。

「今日まで大切に育ててくれてありがとう」

こんなに涙もろい人だって、他の国の人は知らないわね。
お父様に旦那様になる人を紹介した時、ギャイギャイと威嚇してたのを思い出すわ。
娘が欲しければ自分を倒してみせろ!なんて言って、六爪を抜いたわね。
驚いたけど嬉しかったわ、お父様の気持ちが。

「お父様とお母様のような、素敵な夫婦になります」

離れるのは寂しい。
今まで毎日顔を合わせていたし、お食事もお稽古事もお父様と一緒だった。
いつまでも傍にいられるなんてないと分かってたけど、いざとなると寂しくて泣けて来るの。
やっぱり私はお父様の娘ね。

「いつまでも大好きよ、パパ」

パパと呼ぶのも今日で最後ね。
だからちゃんと気持ちを伝えるわ。
次会う時は、孫を連れて帰る時。
その時は、私にくれた以上の愛情を頂戴ね。



〜Daddy is the number one in the world〜



※世界=日ノ本



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