Maine

□入学
1ページ/4ページ

三月下旬。

高校受験も終わり、結果も出た次の日。
太子から電話がかかってきたかと思うと、行き成り「受かったか」と、勢いよく聞かれた。

『なあ!どうだった!?受かったか!?』
「…はい、無事。」
『そうか!
  あーー良かったあ…これで先ず安心だな!』
「でも、取り敢えずですよ。高校の勉強に着いていけるかどうか…」
『兎に角、先生が言った事と、黒板に書いてある事をノートにきっちり見やすく書いて、帰って必ず復習する。分からない所があったら、先生に聞くとかすれば、置いて行かれる事は無いと思うぞ。
  お前は元々頭良いしなぁ』
「そんな事ないですよ。結構無理して今の成績保ってますし、何より曽良君に支えてもらってますから」
『お、そっか。お前ら二人は結構仲良くなったもんなぁ』
「ていうか、僕が曽良君以外の友達があんまり出来ないだけなんですけどね」
『んな事ないだろ!お前は人柄良いし、絶対クラスの人気者になれるぞー?』

「私の方が絶対人気だけど」と付け足して、彼は笑った。




四月。

「あー入学式か…」
「多分僕寝ます。退場の時起こして下さい」
「ちょ、曽良君…寝ること前提ですか。」
「あんな式要らんでしょう…校長が話して終わり、で済むと思うんですがね」
「あ、でもそこは同意」

下らない話をしながら体育館へ向かい、無駄に長い式を終わらせ、教室へ移動となった。


「そう言えば、担任って誰なんだろーね」

周りに人が居るので、現代風に直して曽良に話しかけると、直ぐに返事が返って来た。

「…どうせ…」
「あの人、かな」
「そうでしょう。理事長の息子が余計な事言ったんじゃないですか」

そう言われて納得した。

理事長の息子とは、太子の事だ。因みに理事長は馬子さん。
きっと、色々言い訳考えて、無理矢理芭蕉さんを担任にさせただろう。

そんな事を考えながら曽良としばらく話をしていると、お待ちかねの担任が教室に入って来た。

「おはよー皆ー
  式お疲れ様。早速だけど、取りあえず教科書配るね。その後自己紹介でもしよっか。」

で、入って来たのはやはり芭蕉さん。
先に配るものを配ってから、ゆっくり自己紹介だのなんだのしようと言った。

教科書を配り終え、自己紹介タイム。
廊下側の端の列の一番前から順番に、席を立ち、名前、趣味、一言、と言う定番のもの。

僕は廊下側の列の一番後ろ。で、案外早くに順番がまわってきた。

…まあ、笑われるのは覚悟してるんだけど、いざ言うとなると…なんか曽良君が心配そうに顔しかめながらこっち見てるし。
やっぱ気にしてる事とかバレてるよなぁ…何曽良君エスパー?

「小野妹子、趣味は特になし。一年宜しくお願いします。」

適当に言って、さっさと席に着いた。
あちこちでくすくすと笑い声が上がったのだが、もう気にしない。慣れている。

ていうか、何でよりによって名前が「妹子」なのだろう。一度母に問ってみたい。
昔は良かったけど、今は名前に「子」が付くと女と言うのが常識、と言うか、男では有り得ない名前になる。
…それくらい解ってただろうに、何でこの名前にしたのだろうか。これも閻魔さんが仕組んだ事だったとしたら、今度一回シバいてやりたい。

で、僕の番が終わり、4回くらい後に河合の番。まあ、河合も僕と殆ど変らない内容、所謂手抜きで、芭蕉さんが複雑な苦笑いを浮かべていた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ