Novels 1

□Una notte sacra
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「しないの」

ソファーに押し倒された雲雀が、動きを止めたディーノに問い掛ける。

「しないなら帰る。するならさっさとしなよ」

「ホント色気ねーな……」

だが、拒まれないのは嬉しい。
ディーノはプレゼントのラッピングを解くような丁寧な手つきでシャツのボタンを外すと、露にされた白い肌に口付けた。

「痕残すなって、いつも言ってる」

「もう学校休みだろ。誰にも見られる心配ないんだからいいじゃん」

「そう言う問題じゃ……」

柔らかな首筋を強く吸われる感覚が、雲雀から言葉を奪う。
雲雀は最初こそ足を振り回したり身を捩ったりと抵抗を試みたが、それでも朱を散らす事を止めないディーノにやがて諦め、ディーノの好きにさせる事にした。

「綺麗だな」

ディーノは愛おしそうに、自分が散らした紅い痕を指でなぞる。
汚い事などまだ何一つ知らない無垢な身体。
自分だけがそれを汚す事を許されている。
雲雀を抱く度に胸を焼く罪悪感と暗い悦びが混在する感情は、今尚健在で。

「あなたの方が綺麗だよ」

「そうか?」

「うん」

金糸を引っ張り邪気の無い顔で言ってのける子供の言葉に、その思いは一層強くなっていく。

まだ雲雀は知らなくていい。
自分の肌を愛撫する手が、どれだけ汚れているのかを。
ほんの十数時間前、この手が一つの命の灯を消した事を。

ディーノは血塗られた手で白い身体を抱き締め、口付けた。
小さな舌先と細い腕が、ディーノを求めて絡みついてくる。

「愛してるよ」

汚れた自分の中にある、一番綺麗な感情を表す言葉。

どうかこの子がいつまでも綺麗でありますように。
どうかこの子がいつか自分のように汚れてくれますように。

矛盾する祈りを愛しさに代えて、愛する身体に注ぎ込む。

罪人にも善人にも、等しく訪れる聖なる夜。
今宵だけは誰もが、清らかな神の御子になれる。

「Buon Natale」

囁いた免罪符のような言葉は、やがて熱い吐息に消されていった。







2011.12.24
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