Novels 2

□嬉しくて楽しくて幸せな日
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五月五日。全国的には子供の日。
けれどこの家ではそれに加え、末息子の誕生日でもある大事な一日。
それ故午後のおやつに供されたのは、この時期和菓子屋を席巻している柏餅と、ちゃんとバースデープレートの乗った苺のケーキ。

「俺の苺きょうやにやる」

誕生日だから特別な、とニカッと笑うのはきょうやの七つ年上の兄。
チョコレートで出来たプレートも、砂糖で出来た特注の鳥型とハリネズミ型の人形もきょうやの皿に乗っている。
それに加えて兄から譲り受けた大粒の苺まで乗って、きょうやの皿は華やかな彩りでいっぱいだ。

「今日は子供の日でもあるんだ。君だって主役の一人なんだから、我慢して弟に譲らなくてもいいんだよ」

「我慢なんかしてねーもん。きょうやが喜んでくれたら俺が嬉しいの」

「ありがとう」

母親と兄の会話にきょうやは礼で割って入る。

「なあきょうや。他に欲しいもんねえ?小遣いの範囲だったら何でも買ってやるよ」

両親が仕事上扱う金銭は莫大でも、長男への小遣いは世間一般の平均と変わらない。
五歳の次男に至っては未就学児と言う事でまだ小遣いの対象にはなっていなかった。

「子供だって小遣いの範囲でやりくりしようとしてるんだよ。あなたも見習ったら」

「どれ見てもきょうやに似合いそうだしきょうやが好きそうだし、買いたくなるに決まってんだろ。お前はきょうやが可愛くねーのかよ」

「話をすり替えるな。何でもかんでも買い与えるなって言ってるんだ。あの子が欲しがったならともかく、そうじゃないのに不要なものを山程買って来て。あなたから貰ったものは大事にしまっておく子なのに、多すぎてしまいきれずに泣きそうな顔で途方に暮れてたじゃないか。可哀想に」

「きょうや俺の事好きだもんな。俺も負けず大好きだけど」

「締まりのない顔でヘラヘラするな」

「あれ、もしかして恭弥妬いてんの?可愛いな」

「馬鹿じゃないの」

「きょうやとは別でちゃんとお前の事愛してるよ」

「ちょっと。子供達の前で変な事しないで」

口喧嘩になるかと思いきや甘い雰囲気になる両親だったが、けれどこの家に於いては日常茶飯事で特におかしな事だとも思っていない息子達は構わず話を続けている。

「欲しいものとかさ、して欲しい事とか、ねえ?」

兄に聞かれたきょうやは小首を傾げて考える。

朝も、デザートのゼリーを半分わけてくれた。
昼はきょうやの好きな番組があったから、テレビのチャンネルを譲ってくれた。
今もおやつをわけてもらったからお腹はいっぱいだし、父親に山程服や玩具を買い与えられたから欲しいものが思い浮かばない。

だから首を横に振ったのだが目に見えて落胆されてしまい、再びきょうやは考える。
物はいらない。それじゃあ何かして欲しい事。

されて嬉しい事。
今自分がしてもらいたい事。
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