リクエストSS
□RECALL
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昔からリボーンの依頼と言うのは無茶苦茶だったし、常識の範囲で考えても有り得ないものが殆どだった。
残念ながらそれは、十年経とうが二十年経とうが変わらないらしい。
「成功するか失敗するか全く読めねえし、人体にどんな影響が出てもおかしくねえ改良途中のバズーカーの人体実験の被験者になってくれ」
「んな事言われてやる奴がいると思うのかお前は」
「赤ん坊直々の頼み事なんて羨ましいにも程がある。断るなんて贅沢だよ」
「あのな恭弥、どこの世界に銃突き付けながら頼み事する奴がいるんだよ。つかお前、リボーンの事好き過ぎんだろ」
「うるさいな。赤ん坊、こんな面倒臭い被験者は捨てて僕にやらせなよ。君が本気で戦ってくれるなら他に報酬はいらない」
「それも悪くねーな」
身体と同じくらいの大きさのあるバズーカーに寄り掛かり、リボーンは赤ん坊らしからぬ笑みを浮かべる。
リボーンがディーノのもとに持ち込んだのは、十年バズーカーの改良版。
の、手前の手前の更に手前。要するに改良の初期段階だ。
被弾者を十年後の自分と入れ替える十年バズーカーをより応用範囲を広げる趣旨で開発に至ったそれは、座標や時代、入れ替わりの期限と言った概念を任意で設定出来ると言う画期的な代物だ。
正確に言えばそうなる予定で、目下開発が進められている真っ最中の代物だ。
「机上の計算だけじゃ限界があってな。一発ぶっ放して問題点を洗い出さねー事にはどこから修正の手を付けりゃいいかも分かりゃしねえ」
「仮にも同盟ファミリーのボス相手によくそんな危なっかしい打診が出来んな。取り返しの付かない事になったらどうしてくれんだ」
「心配すんな。生命の保証だけはある」
「だけかよ!」
「入れ替わるリミットは最長二十四時間だ」
「それしか保障ねーんだろ」
「まあな」
聞けば、どの時代に飛ばされるのか、タイムアップ時には無事にこの時間軸に戻って来られるのか、そして入れ替わった側は元いた場所に戻れるのか、これだけは譲れないと言う最低ラインの安全保障に基づく疑問にすら『分からない』と答えるしかないのだと言う。
「あれもこれもと機能を増やしたら膨れ上がっちまってな。まず、ちゃんと作動するかどうか調べさせろ」
「そっからか!つか、んな実験身内でやれ!」
「ボンゴレに何かあったらどうする気だ」
「キャバッローネはいいのか!」
「ったく、昔っからぴーぴー喚くしか能がねーのかてめーは。こんな奴のどこがいいんだ、ヒバリ」
「初恋兼初体験の相手だから絆されるんだよ。それより、いい加減キリが無いからさっさと僕に撃ちなよ」
「その方が手っ取り早そうだ」
「その代わり、さっきの約束守ってくれるかい」
「ガチバトルか?フルパワーは無理だぞ。お前が死んじまう。八割パワーでよけりゃ相手してやる」
「舐められてるみたいで悔しいけど、まあいいや。それで手を打とう」
「おい!」
「うっせえぞ、へなちょこ」
「出来れば二十年前のイタリアに行きたいな。へなちょこ仔馬にヤキを入れてやりたい」
「いい考えだな。そんじゃ行くか」
「ちょっと待てお前ら!」
あれよあれよと言う間にディーノの目の前で話は進み、決定してしまったようだ。
止める暇も無くバズーカーは発砲され、大きな爆発音と共に辺りは白煙で覆われた。
「くっそリボーン!恭弥に何かあったらどうする気だ!」
「そん時ゃてめえのへなちょこぶりを呪うんだな」
「ふざけんな!」
「心配すんな。あいつならどの時代に飛ばされてもビクともしねえ。それよりお前は『そいつ』をどうにかしろ」
「あ?」
ようやく薄くなった白煙の向こうに、蹲る影が見える。
どう考えてもこれは、入れ替わったどこかの時代の雲雀だろう。
「……恭弥?」
自ら望んで被験者になったこの時代の雲雀と違い、彼は何も知らずにここへ飛ばされてしまったのだ。
納得のいく説明をして不安を取り除いてやらなければ。
「大丈夫か?どっか痛いとこないか?」
「……誰?」
耳に届いたその声にディーノは動きを止めた。
雲雀の声とは思えぬ程その声は高く、口調は幼かったのだ。
そう、まるで小さな子供のように。
「ちょ……待て待て!恭弥!?」
辺りを覆っていた白煙がようやく晴れた。
そこに座り込んでいた、この時代の雲雀と入れ替わりに飛ばされて来たであろう『雲雀』は、小さな子供の姿をしていたのだ。