リクエストSS

□pursue
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天気のいいうららかな昼下がり。大通りから数本裏手の小道と言えど、通り沿いに点在するカフェやバールは盛況だ。
そんな一角にある小さなカフェのオープンエリアに、ディーノはいた。
のんびりカップを傾け、時折り親しげに声を掛けてよこす町の人達に笑顔で応える姿は、休暇を満喫する姿そのものだった。

けれど裏の稼業に精通し研ぎ澄まされた感覚を持つ者ならば、この界隈に広がるピリピリとした空気を感じる事が出来るかもしれない。
それは無論ディーノからも発せられている。
だがその棘も、目の前に一人の青年が座ってからはいささか弱まってしまったようだった。

「何でお前がここにいるかな」

「おかしな事言うね。愛してる人とはいつだって一緒にいたいに決まってるだろ」

「うーわー嘘くせー。全っ然心こもってねえどころか超棒読みじゃねえか」

「心外だな」

恨めしげなディーノの視線などお構いなしでカップを傾けるのは、ボンゴレ雲の守護者・雲雀恭弥。

「本当の所、何しに来た」

「デコイの駒を増やしてあげようと思って」

「俺プラスお前って事?」

「そう」

デコイ、すなわち囮。

人々が行き交う小道に面したオープンカフェに滞在するディーノは、決してのんびり寛いでいる訳ではない。通りのそこかしこからピリピリ突き刺さる殺気を一身に受けている身だった。

それは、キャバッローネの敵対組織。
今まで小規模な小競り合いを幾度か繰り返して来たが、決定的に相手を壊滅させる事は出来なかった。
美味い話をチラつかせ食いつかせたまではいいが、人気の無い場所への誘導は失敗に終わる。
ならばいっその事普通に賑わう街中に誘き出し、一気にカタを着けてしまおう。
乱暴な手段だが、彼らが狙っているのはドン・キャバッローネの首ひとつだけなのだから、こうしてディーノが身を晒している以上彼らの狙いはディーノだけに注がれる。
通り一帯が抗争の場になってしまう事は心苦しいが、さり気無く一般人に擬態したキャバッローネの人員が通りのあちこちに大勢配置され、いざと言う時は善良な一般市民を守る手はずになっている。

キャバッローネの人間は、必ずシマの人達を守り抜く。
それが分かっているからこそ取れる手段だった。

これから勃発する抗争。それは極秘情報で、決して外に漏れないよう細心の注意を払っていた。
それなのに。

「何でいるかなー」

「財団独自の情報網を舐めないでくれるかい。楽しそうな遊びに参加出来ないのはつまらない。悪いようにはしないから僕にもやらせなよ」

「楽しくもねえし遊びでもねえっての」

ディーノはテーブルに突っ伏して呻くが、現に雲雀がこの場に姿を現してしまった以上、手出しせず静観してくれるなど甘い事は考えていない。

「あんま派手にやりすぎんなよ」

「派手に蹴散らした方が後々おかしな気を起こさないと思うけどね」

「派手な戦いはそれだけシマの人達を危険に晒す。彼らを守るのが第一で、敵への攻撃はその次だ。それが出来なきゃ今すぐ消えてくれ」

「一般人達はあなたの部下が総出で守るだろ。僕は手薄な攻撃要因のつもりでいる。例えばこんな風にね」

おもむろに雲雀はテーブル上のナイフを取り上げ、背後に立つ街路樹目掛けて投げ付けた。
途端、呻き声と共に黒尽くめの男が、ナイフの刺さった胸からは赤い血を、手からは黒い拳銃を零して倒れ込んだ。
どうやら抗争の火蓋は切って落とされてしまったようだ。

「専守防衛が日本人の美徳なんじゃないのかよ」

「正当防衛だよ」

しれっと言ってのける雲雀は両手に武器を構え、嬉々として通りに躍り出る。
四方八方から降り注ぐ弾丸をいとも簡単にかわし、時にはトンファーで受け止め、射撃者を片っ端から打ちのめしていく。

突然始まったマフィア間の抗争に人々は慌てふためき街はパニックに陥りかけたが、あちこちから現れたキャバッローネの人員達が守り、誘導し、安全な一角を築き始めた。

「いいなお前ら!一般人にはぜってー怪我させんなよ!」

「おう!」

「任せとけボス!」

全面的に部下を信頼するディーノは頼もしい応答にその場を任せ、鞭を取り出すと、望まずとも派手になってしまった抗争の中心地、すなわち雲雀の元へと走った。
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