リクエストSS

□経験したいお年頃
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「お前さー、俺とするまで自分でしてなかったろ?どやって我慢してたんだよ」

愛を確かめ合った後の恋人同士のピロートーク、と言うにはあまりにもあんまりな問いに雲雀は顔を顰めるが、ディーノは何とも思っていないらしい。

「俺がお前くらいの頃は、ちょっとでもエロい事考えるともう我慢きかなかったけどな」

「子供の頃から獣だったんだ」

「十代半ばなんてそんなもんだろ。一番性欲強い頃じゃねえ?」

「そうなの?」

「そうなの」

ディーノは手を伸ばして雲雀の鞄をゴソゴソ漁る。鞄の中には校則違反を犯した生徒達から没収した雑誌が数冊。
保管場所確保の為、雲雀はこうして定期的に雑誌類を持ち帰っていた。
もっともそれは読む為ではなく捨てる為なのだが。

「ほれ、例えばこんなん」

ディーノが手にした一冊の雑誌には、表紙から中身から、惜しげもなく肌を晒しきわどいポーズを取る女性達の写真が満載だった。

「この手の本とかさ、ビデオとかさ、見ながらすんの」

「自分で?」

「たりめーだろ。ヤりたくなったからってすぐヤらせてくれる女がその場にいる訳ねーじゃん。ここって言うヌキ所で上手い事抜けた時はすっげーすっきりした」

「そんなのした事ない。我慢出来なくなった事とかないから」

「イライラしねえ?」

「イラつく時は群れを咬み殺す事にしてる」

「あーそうだったな。お前はそれで性欲昇華してたんだった」

淡白で、性に興味のない子供ならではの方法が、ディーノにはおかしくて仕方が無い。

「女の人とするの、気持ちいい?」

笑うディーノに、バカにされたと思ったのか雲雀は不機嫌そうに鼻の頭に皺を寄せるが、どうやら興味の方が勝ったらしい。

「何。したいのお前」

「別に。あなたがすごく楽しそうに言うから、どんなのかなって」

「そりゃーめっちゃ気持ちいい」

「自分でするより?」

「比べ物になんねえよ。俺がいっつも手や口でしてやるアレ、あるだろ。あんなのより何倍も気持ちいい」

もっとも今のディーノにとっては、女性に限らず、雲雀を抱く以上の快感など存在しない訳だが。
雲雀がこの手の話を嫌がらず、むしろ興味深げに食いついてくれたのが何だか嬉しくて、ディーノは再び雑誌を捲る。

「ほら、こういうの。女とヤる時の感じに近いっつーアレだ」

広告ページには性具の類が大量に載っており、ディーノはその中の一つを指差す。

「何これ。変な形」

「うん、まあ、お前はそういう反応だろうな。この中に突っ込んでこれで扱くの。中の感触が、女の中に突っ込んだ時にそっくりっつーのが売りの奴」

「まるきり同じなの?」

「女知らない奴はそう思っとけば幸せになれんじゃね?ま、所詮オモチャみてーなモンだ。他にも人形タイプとか色々あっけど、多分我に返ったら虚しくなる」

「ふうん」

「突っ込む奴、お前も使ってみたい?」

興味深々と言った様子で広告を眺める雲雀に、ディーノは複雑な気分になる。
女性の身体や女性との性行為を前提とした道具に興味を持つのは、健全な青少年なら当然の事。
紛れもなく男の性を持つ雲雀だって例外ではない。
自分が歪めてしまっただけで。

「今度来る時、持って来てやっか?」

その気になれば筆下ろし用の女の一人や二人幾らでも用意は出来るし、雲雀に宛がってやる事も可能だ。
ただ、どうしてもそれだけはしたくない。女性器を模した道具の使用が精一杯の譲歩。
女だろうが男だろうが、自分以外の肌を知って欲しくないのだ。

「いらない」

心の狭さに自己嫌悪しかけるディーノの内心になど思い至らないのか、雲雀はあっさり言ってのけると手にした雑誌を放り投げた。

「何で?興味あんじゃねえの?」

「多少はね。けど使う気にはならない。セックスしたくなったらあなたとするからいい」

眠くなったのか、雲雀は大きな欠伸をしてごそごそとベッドに潜り込む。
その口調は、本当にどうでもいいと思っているようだった。
だが、ディーノにとってはどうでもよくなんて、全くなくて。

「したく、なんの?」

「なるよ。だからしてるんじゃないか」

「俺がしたがるからヤらせてくれてんだとばかり」

「どうして僕が自己犠牲みたいな我慢しなくちゃいけない訳。したいからしてるだけだけど」

「そっか。あ、じゃあついでにも一つ。俺とじゃなくてもいいとかは?」

「ないね。あなた以外と出来るとは思わない。気持ち悪い」

「そっかー」

犬の尻尾がついていたらブンブン振っていただろう満面の笑みで、ディーノはシーツごと雲雀を抱き締めた。
決して疑っていた訳ではないが、はっきり言葉にしてもらうとやっぱり嬉しいし、安心する。

「随分嬉しそうだね」

「そりゃ。お前に俺だけだって言ってもらえて嬉しくない筈ないだろ」

「挿れる経験をしたくなったらあなたが相手する事になるんだけど、いいんだ?」

「はい?」

「僕はあなた以外に触れたくない。だったらその時もあなた以外に選択肢はない」

「いや、それはちょっと」

「へえ、僕が他人の相手してもいいんだ」

「だめ!それはだめ!けどそれとこれとは別!したいならさっきみたいなの持って来てやっから!」

「生身じゃなきゃ嫌だ。その時はよろしくね。おやすみ」

「きょーや――――!!」

果たして本気なのかただの冗談なのか判別がつかず、ディーノは蒼白になって雲雀を揺さぶるが、まるでスイッチが切れたみたいに寝入った子供は、健やかな寝息を立てる他はうんともすんとも言わない。
ディーノには、起きたらさっきまでの会話を忘れてくれていますようにと神に祈る他はなかった。






2012.07.08
 

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