リクエストSS

□本日の攻防戦
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「あ?」

「は……なせ……っ!」

雲雀は亀みたいに首を竦めてディーノの手を外そうと暴れるが、力が入らないのかその目論見は無残に失敗している。

「ふーん」

じたじたと身を捩る雲雀の首元に、ディーノは再度指を滑らせる。

「―――っ!」

再び真っ赤になって首を竦める雲雀に、ディーノは確信的な笑顔を浮かべた。

「くすぐったいんだ?」

「……っ……そんなんじゃない……っ」

「ほれ」

「ひゃ……っ!」

「うはは、恭弥の弱点はっけーん」

「やーっ!」

ディーノは後ろから覆い被さりこちょこちょと首の付け根を擽った後、雲雀の上体を戒めている鞭を緩めて脇の下にも指を滑らせた。

「や……だっ!」

「こういう触り方はHの時もしないから知らなかったけど、そっかお前くすぐったがりなんだな。かーわいいなー」

「うるさいよ!いい加減にしないと咬み殺すよ!」

「出来るもんならやってみな」

床に転がした仔猫の身体を擽るディーノは本気で楽しそうだった。
涙目でうつ伏せになる雲雀を仰向かせ、両手を頭の上で一纏めにして捕まえる。
脇の下では悪戯に指を蠢かせたまま。

「ほら。仕事終わるまでいい子で待ってるって言え。そしたらやめてやっから」

「誰が……っ」

「反抗的な態度取るとエスカレートすんぞ。ほら」

「や……!」

身動きもままならず些細な手指の動きに身を捩じらせる雲雀の顔は真っ赤で、黒い瞳の淵は薄く濡れている。
ただ擽っているだけなのだがそんな様子にどうしても性的な気分になってしまい、ディーノの腰の奥に覚えのある感覚が湧き上がる。

「大人しくしねーと服脱がせて擽るぞ。首の付け根と腕の付け根と来たら、次は足の付け根だよな。どんな風に触ってやろっか?」

ディーノは仰向けになった雲雀の上に覆い被さり、本格的に雲雀を組み伏せる体勢となった。
悪戯な仔猫の仕置きから恋人への性的な接触へとシフトした脳では、雲雀の一瞬の動きを予測する事もそれを避ける事も出来なかった。

その結果

「こ……の……いい加減に……っ!」

「―――っ!!」

素早く立てた雲雀の膝がディーノの股間に打ちつけられる。
萎えている通常時のものではなく、性的興奮に兆しを見せ始めたものに。

声も出せずに悶絶するディーノの身体の下から這い出した雲雀は、とどめとばかりにディーノを蹴り飛ばす。
どうやら爪先は再び股間を直撃したようだった。

「ねえ」

そして雲雀は、事の顛末を声も出せずに見守っていたディーノの右腕に向き直る。

「これ、いらない」

指差す先は哀れな主の姿。

「仕事でも何でも好きにさせなよ」

余計なとばっちりを進んで受けたい筈もなく、ロマーリオは手を上げて、まだ赤味の残る顔で部屋を出て行く雲雀を見送った。
部屋に残るのは、とても仕事など出来そうにない主と仕事の山。

「ボース。どうすんだ」

「くっそ……あいつ覚えてやがれ……泣くまで仕置きしてやる……」

「仕置きもいいが、その前に仕事をどうにかしてくれ」

右腕は溜息をついて机上を横目で見遣る。
そびえる書類の山は、恐らく今夜中に切り崩される事はないだろう。
明日以降の調整に頭が痛いが、きっと明日は明日で、喉元過ぎた子供がまたトンファー片手に襲撃に来るのだろう。

「あんた達、昨日も同じような事してただろう。いい加減学習しろ」

辛辣な部下の言葉に言い返す事が出来る筈もなく、ディーノは床に蹲ったまま、暫くの間説教をくらう羽目になった。





2012.06.10
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