リクエストSS

□a cursed nuisance
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一方、半壊した教室の中では、全身傷だらけになったディーノがかろうじて雲雀の捕獲に成功していた。

「捕まえたぞ、このじゃじゃ馬」

「離せ」

鞭で上体をぐるぐる巻きにされても、雲雀は頭突きでの抵抗を諦めない。

「そういう、無駄に前向きな所も好きだぜ」

ぽんぽんと背を叩いてあやしていると次第に雲雀からの抵抗は小さくなり、やがて大人しくディーノに身を任せるようになった。

「大好きな学校こんなにぶっ壊して、お前らしくもねえ」

「あなたが応戦しないで大人しく咬み殺されてたら壊れなかったよ。だからこれはあなたのせいだ。弁償しなよ」

「何だその理屈。どうしたんだよ。朝から機嫌わりーな」

「あなたのせいだ」

「会話しろって。ったく、今朝は今朝でちょっとロマと電話してる隙に登校しやがって……俺はもうちょっと一緒にいたかったのに」

「あなたのせいだって言ってるだろ」

口調はどこまでも喧嘩腰のくせに、雲雀は鼻の頭に皺を寄せ拗ねている事が丸分かりの表情でディーノを睨む。

「……おはようのキスがなかった」

「……う、わ!ごめん!」

二人一緒に眠る時、いつも先に目を覚ますディーノが愛の言葉とキスを贈って雲雀を起こす。
覚醒しきらないまどろみの中で行われる小さな営みが、訪れた新たな一日を幸福に彩ってくれたものだった。

だが、今朝はそれがなかった。
疲労を溜め込みぐっすり眠っていたディーノが、雲雀の起床時間になってから慌てて飛び起きたせいだ。
しかもその後ロマーリオと仕事の通話を始めてしまい、そのせいで起きてから全く構ってもらえなかった雲雀の機嫌が最大限に悪くなったと言う訳だ。

「ごめん、ごめんな」

「許さないよ。僕は怒ってるんだ」

「うん、ごめん。俺が悪い。ごめんな」

皺の寄った眉間と鼻先、拗ねて膨れた頬、そして尖らせた唇にディーノはキスを落とす。

「……こんなので誤魔化されないよ」

「ん、恭弥の好きな事して欲しい事、何でもしてやる。だからここで暴れてないでホテル行こう。な?」

「……明日はちゃんとキスして」

「ああ。いつもより沢山してやるよ」

鞭を解いた雲雀の身体をディーノは軽々抱き上げる。
ディーノの腕の中の雲雀も先程までの凶暴さは欠片も無く、大人しくその身を委ねていた。
どうやら機嫌も少しは直ったようだ。

「教室の修理代、あなたが出してよね。あなたのせいなんだから」

「ああ分かった」

鼻先を首筋に押し当てた雲雀に甘えたように強請られたら、ディーノとしては二つ返事だ。
可愛い恋人を腕に抱え、ディーノは半壊した教室を蕩けそうな笑顔で出て行った。




一方、校庭に避難中の生徒達は、凶暴な風紀委員長による一連の破壊活動が、他愛も無い痴話喧嘩の余波であるなど夢にも思わず、暫くの間蒼白な顔で怯えていたのだった。







2012.05.20
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