リクエストSS

□stranger
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「あれ?お前、それ何」

睨み付けた先のディーノから、白い煙のようなものが立ち昇っているのが見える。

「タイムリミットみてーだ」

「帰るの?」

「ああ。昔のお前に会えて嬉しかったよ」

「今度は僕も連れてきなよ。この子達と遊んでもいいよ」

「優しいなお前は。じゃあ今度は皆で遊ぶか」

「うん」

「元気でな、恭弥」

「てめ!どさくさに紛れてキスなんてしてんな!」

「頬にならいいだろ。唇は取っておいてやったんだ、褒めてもらいたいくらいだぜ」

軽口の応酬の後、再び大きな爆発音が響いた。
一際鮮やかな笑みを残し、突然の乱入者は真っ白な煙に包まれて見えなくなってしまった。
白煙が晴れた後は、もうそこには誰もおらず、誰かがいた形跡すらなかった。

「いなくなっちゃったね」

ディーノとしてはせいせいしているのだが、雲雀が寂しそうにしているのが気になって仕方がない。

「もっと一緒にいたかったか?」

「今より強くなってるって言った。手合わせや修行やバトルをしたかった」

「や、それ全部同じ事だし」

「背、高かった。手も大きかった」

「そりゃ……十年経ちゃ少しはまだ成長すんだろ……んだよ、俺よりあいつのがいいのかよ」

拗ねたディーノがソファに座り込むと、雲雀も隣に座りじっと見上げてきた。

「これと目は同じ」

ぎゅっと髪を引っ張られて思わず顔が近付いてしまう。

「匂いも同じだった。ちゃんとあなただった」

すり、と頬に寄せた鼻をくんと鳴らして、雲雀は甘えたようにディーノにもたれかかる。

「恭弥?」

「僕の言う事何でも聞くんだって?」

「うん、まあ、基本的には。どうしても無理な事は出来ねーけど」

みっともないとは思うが、こうして逃げ道を作っておかない事にはそれこそどんな無理難題を吹っ掛けられるか分からない。

「じゃあ、目瞑って」

「あ?」

「いいからさっさとしろ」

「あ、はい」

まさか殴られるんじゃないだろうなと幾分怯えながら言う通りにすると、小さな温もりが唇に宿った。

「……あ?」

「何」

思わず目を開けると、すぐ目の前には怒ったような困ったような顔をした雲雀が、耳まで赤くして膝の上に座り込んでいる。

「今日はずっと邪魔が入ってあなたに触れなかった。さっさと構いなよ。それとも、僕の言う事何でも聞くっていうのは嘘なの」

「嘘じゃねえ!構う!」

邪魔されて、つまらなくて。
触れたくて仕方なくて。

雲雀も同じ気持ちでいてくれたのが嬉しくて、ディーノは自分の膝の上で顔を真っ赤にして膨れる雲雀を、満面の笑みで力一杯抱き締める。

キラキラの髪も、蜂蜜みたいな目も、甘い香りも変わらないけれど、未来の彼はこんな顔を見せてくれなかった。
同じだけど同じじゃない。
やっぱりこっちの方がいい。

雲雀の胸の内を汲んだのかどうか、大好きな唇が寄せられたから雲雀は黙って目を瞑る。
邪魔され続けた一日は、何の邪魔も入らない甘い時間で終わりを迎えられそうだった。







2012.04.21
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